約 3,091,538 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/79.html
武装神姫のリン 第4話「予想外の初陣」 本来はイベントを見に来ただけだったはずだが、今、俺ははじめて見るバトル用のインターフェイスをまじまじと見つめていた。 データを使用するバーチャルバトルなのでリンはまるでロボットのコックピットのようなインターフェイスに腰掛け、首の下部にある普段は隠れた端子に専用ケーブルを繋がれる。 「なんにもそういう訓練みたいなのしてないけど、大丈夫か?」 俺が尋ねるがリンはキリっとした目を向けて。 「基本的な動きはプリセットされていますし、基本武装ならある程度は扱えるはずです。」 「そうか、俺が指示とか出したほうがいいのかと思ったけどどうする?」 「私が判断するよりもマスターの判断の方が信頼できます。お願いします。」 「わかった。で装備はどうする?」 「レッグパーツとセカンドアーム、アングルブレードをレッグパーツに。セカンドアーム基部にフルストゥ・グフロートゥをお願いします。」 「OK。セットしたぞ。 おっと登録名忘れてた、『リン』っと・・・って他ユーザーと重複するから登録不可だってよ、どうする?」 「マスターのお好きにしてください。」 「そうだな・・・じゃあ漢字で『燐』これでいいだろう?」 「もちろんです、マスターが下さった名前ですから。」 「……この漢字は使われて無いみたいだな。よし、コレで登録っと」 俺はそばにあるバトルユーザー登録用の端末に全ての情報を入力、登録ボタンを押す。 そうするとすぐに係員がIDカードを持って来てくれた。非接触ICカードだ。 コレに俺の住所やら、リンのシリアルナンバーなど神姫に関する全ての情報が入っている。 今後はこのカードを端末にかざせば、大会に出る際の書類の書き込みが要らなくなるらしい。 便利なのは分かっているが、やはりクレジットカードと同じで紛失すれば危険な代物だ。 規約には「紛失された際はお近くのカスタマーショップに行くか、こちらの電話番号にお電話ください。」とまで書かれている。 とりあえずカードから目を離して、リンを見る。 このトーナメントは6名のエントリーで1回戦は2試合、ということで6人の内2人はシードになるのだが、運がいいのか悪いのか俺は見事にシード権を得た。 ということで空き時間を利用してリンはトレーニングをしている。 プリセットされた動きがどういうモノなのかは分からないが、一見すると結構洗練された動きをしている様に見える。 そうしてリンの動きに関心してるうちに俺たちの番が回って来たようだ。 俺は観客の視線が集中するステージに立つ。まさかこれほど人が残っているとは思っていなかった。 肩にはリンが座っている。リンの服はインターフェイスに接続するために脱がしてあるがソレが原因なのか、観客が多いからなのか、リンは少し恥ずかしそうだった。 相手に目を向ける、相手は俺と同年代の男だ。 メガネをかけ、いかにも『数学が得意です』といった感じだ。 そいつの神姫はハウリン、大きな目を鋭くさせてリンをにらむ。 「マスター、お願いします。」 その目線を感じてか、いつもより凛々しい声でリンが言った。 「よし、初戦を勝利で飾ってやろうぜ」 「ハイ!!」 スクリーンにリンの姿が現れる。ソレとほぼ同時で相手のハウリンも現れた。 ただ戦闘が開始されると選手側(もちろんマスターも含めて)からはスクリーンが見えなくなる。 敵の最初の位置を確認できる極めて貴重な時間だ。 相手は基本装備に加えて大型のキャノン砲「吼莱壱式」をもう1門左腕に装備している。 リン…いや燐を近づける気は全く無いらしい。 一方、燐は完全に基本武装のまま。セカンドアームにレッグユニットを装備し。 左手にフルストゥ・クレインを、右手にはSRGR(シュラム・リボルビング・グレネード・ランチャー)を持っている。 アングルブレードなどは先ほど装備指定した箇所にマウントしたままだ。 「それでは、新人戦の準決勝第2試合。 TYPE DEVILの燐 対 TYPE DOGのレオナ 開始!!!!」 司会の女性が大きな声で試合開始を告げる。 先制したのは敵。いきなり最大出力で吼莱壱式を撃ってきた。 「燐!! 避けろ!!」 燐はレッグユニットの脚力を最大限に発揮させ、跳ぶ。 そこに敵のプチマスィーンが飛んできて周りを囲む様に展開して動き回る。 「蹴散らせ!」 燐はリーチを生かした回し蹴りを放つ。マスィーンズが回避行動を取った間に身体をひねって着地。 がそこにまたしても吼莱壱式の砲撃、しかも今回は二門両方の一斉掃射だ。 「!!」 俺が指示を出す間も無かったが、燐は着地と同時にサイドステップをして2本のビームをギリギリで回避。 正にレッグパーツの脚力の賜物だった。 この攻撃で勝負を決めるつもりだったのだろう。 さすがに最大出力での2連射で右腕の吼莱壱式はもう使い物にならないらしく、敵はソレを捨て置きビルの陰に姿を消した。 即座に俺は指示を出す 「燐、敵は奇襲を仕掛けてくるつもりだ。 なるべくビルに身を預けて敵の射線上に出ないように。」 「はい、気をつけます。」 燐は大きめのビルに背をつけるように敵を探す。 敵が姿を消したからはや4分。なかなか敵は見つからない。 そうして燐が焦りと苛立ちを募らせたころ影がビルから飛び出した。 燐は即座に反応してフルストゥ・クレインを投擲、ソレは確かに影を仕留めたが、燐の後方からビームが飛んできた。 セカンドアームを1本犠牲になんとか直撃を免れた燐だったが、すでに敵は燐の背後にいた。 そして影の正体が判明する。ソレはひとつに集まり、胸部を覆うアーマーを乗せて跳ぶプチマスィーンだった。 胸部アーマーの中央にフルストゥ・クレインが見事に突き刺さっている。 がソレが意味をなさないことは燐自身が一番良く分かっているだろう。 俺たちは敵の作戦に見事にハマってしまったのだ。 敵は冷徹な声でこう言った。 「アンタの、負け。」 燐はスッと顔を俯かせた。 燐は体勢を崩し、しりもちをつく形で背に吼莱壱式の砲口を当てられている。 「こんな作戦に引っかかるなんて、キミのマスターっておつむが弱いんじゃないの? ボクのマスターとは違って…さ」 「…………な…」 燐が何か言っているようだが、良く聞こえない。 「なにか言った?」 敵が燐に聞いてみるが燐は俯いたままのようだ。 「…ス………す…な…」 「だから、なんなんだよ?」 そして俺は気付いた。燐の肩が震え。そして拳が強く握られていた。 「マスターを、侮辱するなぁ!!!!」 燐は叫びと共に無理やりに地面を蹴り、逆立ちのような体勢に、そして片方だけ残ったセカンドアームで地面を強く押す。そうしてバク転のような形で敵の背後を取る。 このとき俺は驚いた。 それはエキシビジョンマッチの第1戦でマオチャオがストラーフの攻撃をかわしたときの動きの応用だったのだ。 敵はあまりの予想外の動きに混乱し、慌てて吼莱壱式を構えようとするがそれは叶わなかった。 燐がフルストゥ・グフロートゥを投擲し砲身を貫いていたからだ。 そのまま燐は近場のビルの壁を蹴って1直線に敵へ跳ぶ。 敵がプチマスィーンを呼ぼうにも、距離が遠すぎた。 怒りに燃える燐のSRGRがゼロ距離で発射され、敵を1瞬で炎が包み込んだ。 そうして俺とリン……燐との初戦は幕を閉じた。 インターフェイスから接続をはずしたリンは上目使いで俺に言ってくる。 「あの、すみません……取り乱してしまいました」 俺は手を差し出してリンを乗せる。 「いや、俺のことで怒ってくれたのはうれしいんだがな……」 と目配せをしてリンが左を向くと 「ヒューヒュー、お暑いねェお二人さんw」 「コンチクショー、俺の神姫もあれぐらい慕ってくれば……orz」 「神姫とのあんな関係…羨ましいぞ!!!!!」 「燐ちゃんを俺に譲れ~~~(泣)」 「燐ちゃん、こっち向いて~~」 こんなかんじでヤジが飛んでくる。 燐は顔を真っ赤に染めてそのまま俺のジャケットの胸ポケットに隠れてしまった。 係員が決勝をどうするか?と聞いてきたがリンはもう恥ずかしくて出られないと拒否。 ということで決勝戦は不戦勝でエントリーナンバー2番の神姫が優勝。 そしてリンが絶対に出ないと言ったため、表彰式も辞退した。 しかし係員の人が気を利かせてリンは2位の賞品を貰うことができた。 賞品はバーチャル訓練用の端末だ。基本的にバーチャルバトル用のインターフェイスと同じシートがノートほどの大きさの基盤に繋がっており、そのままでも神姫の訓練やUPU戦が出来るが、 外部出力からケーブルをTV(もしくはPCのモニター)につなぐと、神姫に見えている(バーチャルバトル中は神姫のカメラアイからの映像情報はカットされ、端末からのデータが目に映るしくみになっている。)のと同じ視点や、戦闘フィールドをイロイロな角度から見ることが出来る。 そうしてマスターもバトルの練習が出来るようになったスグレモノである。 何でもエキシビジョンマッチのお礼としてランカー達に贈呈されるはずだったが、彼らほどになるとソレより高性能な訓練機を持っていたそうで受け取りを断られたそうだ。 なんとも幸運なことだ。 購入しようと思えばソレこそショップで扱われる安価なPCと同額のお金が必要になる。 大き目の箱の横に書かれているスペックを見ると搭載されているCPUおよびGPUは俺のPCに搭載されているモノより高性能なモノだった。 それに驚きつつも、俺はまだ表彰が行われてまだ歓声の沸くバトル会場を後にした。 そうして先日から並んで同人パーツを買い漁っていた友人と合流。 がそこで俺を待っていたのは豪華な衣装ではなく、ゲームのキャラクターの武装のパックだった。 赤と銀の2丁拳銃や独特の形をした剣、先に刃が出る金の十字架。メーカーが一発で分かってしまうラインナップだ。 なんでも列に並んでいるうちに俺とリンの戦いを『同士』から聞いて標的を変えたらしい。 だがそのチョイスは俺の好みを見事に当てている。 ほかにも大き目のマントに死神の鎌を思わせる可変式の武器、手足のプロテクターといったものを買っていた。 これでも値切って、出費は予算の70%に抑えたらしい。 これでは文句を言うわけにはいかない。 しかも最後に友人が取り出したのは・・・某創作アダルト小説キャラの衣装。 ちょ、なんで俺がリンにさえ隠している小説シリーズのキャラ知ってるんだよw 黒いゴスロリのドレスに、3つ又の鞭。挙句の果てにきわどいカットの衣装までもが付属していた。 これほどにコアなアイテムを持ってくるとは思ってもいなかった。 しかしドレスはとても綺麗なのでもらっておくことにする。 そしてそのドレスや鞭の由来をなんとかリンにごまかして説明つつ、俺は満足して家に帰っていった。 しかし由来の小説を3日後に発見されリンに縁を切るとまで言われてしまい、慌ててなだめたのはまた別の話。 ~燐の5 「腕試し」~
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2685.html
与太話10 : TVアニメ化に喜ぶ戦乙女 雨上がりの朝、濡れた草木が朝日の光を乱反射させ、教室内をいつもよりも明るく照らしている。大学までの道も輝いていた。ガードレールも輝いていた。エルにとって今日はとにかく、何でもかんでも輝いていた。 大学で顔を合わせるなり姉妹二人はこみ上げてくる気持ちを抑えきれず、抱き合わずにはいられなかった。 「メル!」 「エル姉!」 ぶつかり合うように胸を合わせ、エルはメルを抱え上げて振り回した。ジャイアントスイングのように。そしてやはりジャイアントスイングのように手を離し、メルを放り投げてしまった。危うく机の上から転げ落ちそうになるメルだったが、縁にしがみつきながらもゲラゲラ笑いが止まらなかった。メルを引っ張りあげたエルは、またメルと抱き合った。 「TVアニメ化ですよメル!」 「TVアニメ化だねエル姉!」 「アルトアイネスが登場しますよメル!」 「アルトレーネが登場するねエル姉!」 窓から差し込む光に照らされた机の上を、戦乙女の姉妹はしばらくもつれ合い転げまわっていた。二人のオーナーは前日からはしゃぎっぱなしだった二人を見ていたので、羽目を外していても苦笑するだけだった。姫乃も鉄子も、発狂に近い喜び方をする二人に水を差す理由はない。一緒に喜ぶわけではないが、微笑ましいものを見るような目をしていた。 騒がしさに何事かと集まってくる学生を相手に、エルとメルは自分達の姿がアニメーションとなってテレビに映ることを嬉々として説明した。相手が武装神姫に興味があろうがなかろうが関係なかった。喜びを押し付けるように笑顔を振りまいた。 MMSの存在を知らない学生相手に、エルは天使型と悪魔型と一緒に並ぶことがいかに破格の扱いであるかを説いて回った。これまで武装神姫コンテンツの看板を必ず飾ってきたアーンヴァルとストラーフ。つまり二人は最初期の神姫にして永遠の主人公とも言える。その他多数の神姫達の頭を押さえて、その主人公らの隣に立つアルトレーネとアルトアイネス。キュートなラフ画。ハーレムとバトルを予感させる解説は、神姫として在るべき姿になることを示している。これからの武装神姫を背負って立てと言われたような気がして、しかしエルは重圧以上に天にも昇る気持ちに包まれていた。メル共々、浮かれポンチだった。 二人の背中にコールタールを塗りたくるように向けられたドス黒い視線に、エルとメルは気づけなかった。 ◆――――◆ 大学から帰宅するなりオンライン上の茶室に呼び出されたエルは、コタマが渋い顔をしている理由に思い至らなかった。メルも隣で困惑している。四畳半の真ん中に置かれたちゃぶ台の上には、脱ぎ捨てられたヴェールと十字架があった。エルには、レラカムイの矮躯を包む修道服がいつもより黒く見えた。 「そこに座れ」ちゃぶ台の反対側をコタマが指差し、エルとメルはそこに座った。 「先に言っとくけどよ、アタシは別に嫉妬してるわけじゃねぇんだぜ? 分かるだろ、体はレラカムイでも主に仕えるこの気持ちはそう簡単に無くなるわけじゃねぇ」 「はあ」と気のない返事をするメル。 「アタシら神姫は主の前では謙虚であるべきだ。型番を与えられた日やらモチーフに貴賎はねぇ。主の前ではすべで平等だ。違いがあるとすれば、どれだけ主にゴマすったかどうかだけだ」 「コタマ姉さんが何を言いたいのか、これっぽっちも分かりません」 行儀よく正座したエルに向かって、コタマは大きなため息をついた。一週間分の呼吸に使う空気を吐き出したようなため息だった。これには機嫌の良い戦乙女姉妹も不快感を示さずにいられなかった。 「人を呼び出しといてその態度はないんじゃない? 親しき仲にも礼儀ありって言葉があるでしょ」 「そうですよ。あのマシロ姉さんですら線引きはちゃんとしてるんですからね」 「マシロね……オマエら、クーフランの名前を出すわけだ」 机の上の十字架を手に取ったコタマは意味も無くそれを天井の蛍光灯にかざした。磨き上げられた金色が、今朝の露のように輝いた。 「オマエら、マシロ以外のクーフランを見たことあるか?」 考える間をおかず、エルとメルは頭を振った。コタマは二人を嗜めるように言った。 「そうかよ。じゃあもう一つ聞くぜ。そんなマシロの前でTVアニメ化の話をすることは酷いことだと思わねぇか?」 エルは頭をハンマーで殴られたような衝撃に襲われた。確かに今日は朝から、マシロはいつにも増して沈黙を守っていた。思えば、戦乙女がアニメに出るということは、他の神姫が登場する機会を奪ってしまうことになる。アルトレーネより早く生まれた神姫は多い。クーフランはさらに古参と呼べる神姫になる。出荷数も全然違う。 何も言わないマシロを無思慮な振る舞いで傷つけていなかったか、エルは頭を抱えた。鋼よりも強い芯を持つマシロとはいえ、アニメに登場するからといって無思慮にはしゃぐエルを間近で見せつけられて不愉快でないわけがない。かつて自分も含めたアルトレーネ達は再販が決まらなかったからと神姫センターで大暴れしたではないか。あの時のすべてを破壊し尽くしたくなる衝動を他人に押し付けていいわけがない。 「私、マシロ姉さんになんてひどいことを」 メルも同じことを考えていたらしく、申し訳なさそうに視線を落とした。 「ボクも……TVアニメ化されて少し、調子に乗ってた……」 「やっと分かってくれた?」コタマは修道服を脱いだ。修道服がスイッチになっているのか、言葉がいくぶん柔らかくなった。 「アタシもちょっとキツいこと言ったかもしれないけどさ、二人には落ち着きってものを知ってほしかったんだよ。うん、でも分かってくれてよかった。いや本当。じゃあ一応のケジメとして、ゴメンナサイしとこうか」 エルとメルは素直に頭を下げようとした。神妙な顔をして、背筋を伸ばして頭を5ミリくらい前に倒したところで、二人同時に同じことに気がついた。 「ちょっと待って下さい。どうしてコタマ姉さんに謝らなきゃいけないんですか」 「そうだよ。謝る相手はマシロ姉でしょ」 コタマは目を逸らした。 「そ、そんなの決まってるじゃない。アタシはマシロと一緒に住んでるんだし、代わりに二人の謝罪を聞いとこうって」 「マシロ姉さんをここに呼んでくれればいいじゃないですか。そしたら私たち、ちゃんと謝りますよ」 「そうだそうだ。そもそもマシロ姉なら、こんな回りくどい謝罪なんてされたら逆にキレるに決まってるじゃん。一緒に住んでるコタマ姉ならそこんとこよく分かってるでしょ、なのにどうして――」 そこまで言ったメルだったが、「――あっ」と何かに気づいた風に見えるや、口をつぐんでしまった。顔が申し訳なさそうなものに戻った。 「どうしたんですかメル」 「えっと、やっぱりコタマ姉に謝ろうよ」 「嫌です! 意味もなく謝るなんで戦乙女がやっちゃダメです!」 「いいからほら、ね。ここは頭を下げなきゃいけないとこだよ。……レラカムイ相手にさ」 「うぐっ!?」とコタマが唸った。 エルはようやく、レラカムイがクーフランと同じくコタマ以外に見かけないことに思い至った。鉄子さんはいったいどこからレラカムイを見つけてきたんだろう、と疑問に思ってしまうほどだった。決して貶したいわけではない。ただ事実として、レラカムイの絶対数は少なかった。 「ま、待った待った二人とも。アタシは別に」 「ごめんコタマ姉。ボク達、コタマ姉の気持ちを全然考えてなかった」 「だ、だからアタシは別に」 「今までタマちゃんとか呼んでごめんなさい。コタマ姉さん、悲しいことがあったら私達に何でも相談してください。無力ですけど、きっと力になれますから」 「謝るんじゃねえ! アタシをそんな目で見るんじゃねえ!」 「私、コタマ姉さんの気持ちはよく分かりますから。アルトレーネも昔、『不人気』って言われたことありますし」 「どういう意味だコラァ! つーかテメェ今さりげなく不人気のことを過去形にしやがっただろ!」 「えっ? それはだって、アニメに大抜擢されましたし」 「ブッチ殺す! オマエ絶対ブチ殺してやらああああああ!」 ◆――――◆ ステージに立つなりエルとメルは、コタマ操るセカンドの銃弾の奇襲を受けた。 「エル姉隠れるよ!」 掠るだけでも体が抉られるほどの脅威を、二人は十数階建てのビルの影でやり過ごした。以前も同じようなシチュエーションがあったな、とエルは思った。あの時は確か、神姫の漫画が発売された時だった。漫画の中でアルトレーネが目立ちに目立って、メルと力を合わせてコタマを倒そうとした。しかし漫画の中にハーモニーグレイスの『ハ』の字も無かったことにキレたコタマに、二人のコンビネーションはまったく歯が立たなかった。 「今度は前と同じようにはならないよ」エルの手を引いたメルが言った。アルトアイネス専用の黒い武装脚とスカートを装備し、副腕の代わりにエルを包んでいるのは吸血鬼が着ていそうなボロボロの赤いマント。スカートの中には大量の武装が隠されている。隠し武装のバリエーションは、貞方にもらわれたばかりの時とは比べ物にならないほど充実している。姉であり頻繁に手合わせをするエルでさえ、そのスカートの中身をすべて把握することはできなかった。ビルの中を走る間も、メルはスカートから小型の爆弾をいくつも取り出し、そこら中に設置していった。 「ボクもエル姉も、もう昔とは違う。まだまだコタマ姉のほうが圧倒的に強いけどさ」 「私達にだってプライドってものがあるんです。メル、意地でもコタマ姉さんに一泡吹かせますよ」 ハイタッチを交わした二人は、別の方向へ走り出した。メルはそのまま一階の奥のほうへ。エルは階段を駆け上がっていった。メルがビルの端まで到達して身を隠したあたりで、入り口のほうの爆弾が炸裂した。続けていくつかの爆弾も、爆竹のように次々と爆発していく。コタマが入ってきたことを告げる爆発だ。事務所を模したフロアは机や椅子、棚などがいくつかの島を作って並べられていて、爆発した箇所にあったものが吹き飛んでいく。 「オマエらよぉ、まさかまたビルん中から仕掛けてくるんじゃねぇだろうなあ。もう同じ手は食わないとか思ってるんだろうけどよ、それはアタシだって同じ事なんだぜ?」 コタマが階段に足をかけると、進路を塞ぐように多数の浮遊機雷が発生した。コタマは慌てることなく下がり、爆発をやり過ごした。爆風で階段が吹き飛び、上階との道が途切れた。 「上がるなって意思表示か? アニメに出る奴はアタシに命令できるほど偉くなんのか? エル! メル! どっちかまだ一階に残ってんだろ! 隠れてないで出てきやがれ!」 しかしメルの影は姿を現さず、代わりにコタマが進む分だけ爆発が起きた。爆発は小規模だが、数が多い。コタマは数歩歩く度に爆発を回避するために下がらざるを得なかった。ビルの中心部あたりまで歩くのに少々時間がかかった。 「クソッ、このウザいトラップはメルの奴だな」 「ボクを呼んだ? コタマ姉」 メルは唐突に姿を表した。コタマからは離れた場所、少なくともファーストの攻撃範囲よりも僅かに外に立った。メルの両手にはそれぞれマシンガンが握られていた。コタマのセカンドの対物ライフルと比べると、あまりに頼りなく見えてしまう。 「いい度胸してんじゃねえか。一応聞いとくけどよ、エルも近くにいるのか?」 「いないよ」とメルがやけにあっさりと答えたため、コタマは怪訝な顔をした。 「アタシを出し抜きたい気持ちは分かるけどよ、もっとマシな嘘つけよ」 「嘘じゃないって。本当だよ。じゃあ証拠に、ここらの爆弾を全部爆発させようか」 「ああん?」 「エル姉は、というか普通の神姫は至近距離の爆発を回避したりできないから防御装甲が分厚くなるんだよ。だからもし軽装のエル姉がこの近くにいたら、爆発に巻き込まれて大ダメージを受けることになるよね」 「何が言いてぇんだ?」 「そのまんまの意味だよ。エル姉がいないことを証明するために、今から残った全部の爆弾を爆発させるんだ」 メルはおもむろに両手のマシンガンをコタマではないほうに向けて撃ち始めた。弾が当たった爆弾が爆発し、メルのマントを揺らした。ひとつ爆発するごとに土煙が巻き上がり、コタマとメルの視界を遮った。 (爆発で破片を飛ばしてくるでもなし。煙幕が目的? いや、メルの位置はマシンガンの火で丸わかりだし)ファーストとセカンドに防御の姿勢をさせて、コタマはじっと様子を見た。しかしマシンガンの火が唐突に向けられるわけでもない。メルはただ自分が仕掛けて回った爆弾をヤケクソに爆発させているだけにしか見えなかった。土煙の向こう側で、マシンガンがひっきりなしに弾を吐き出し続けている。 (わざわざ仕掛けて回ったのを意味もなく爆発させて何を――――いや、【仕掛けて回る】?) コタマが動いた。メルの姿は既に目視できなくなっており、セカンドにおおよその位置を撃たせた。セカンドの銃声で一旦マシンガンの音が止まったが、再び鳴りはじめた。それでコタマの疑念は確信に変わった。 「ビルを崩壊させる気かよ!」 メルを置いてコタマは外に向かって走り出した。それを合図にしたかのように、天井の崩壊が始まった。机や瓦礫を飛び越えながらコタマは舌打ちした。 「あの爆弾は柱を壊すためだったのかよ! クソッ、アタシとしたことがどうして気づけなかった!」 地鳴りのような音がして、床との間にあるものすべてをプレスするように天井が落ちてきた。メル自身も恐らく逃げられないだろうが、コタマに確認する余裕はない。壁を突き破るためにファーストを先行させてガントレットを繰り出した。コタマが通れるだけの穴を開けさせるつもりで叩き込んだ打撃は、しかし、壁を粉々にすることができても、大穴を開けるには至らなかった。天井がコタマの頭上僅かまで迫る。一か八か、僅かに空いた隙間に頭から飛び込んだ。膝から先が崩落に巻き込まれた。足が使い物にならなくなるよりも、ビルの一階外側部分に張り巡らされていたワイヤーに気を取られた。 濁流に巻き込まれるように、コタマの軽い体は転がっていった。幸いなことにビルが崩壊する方向はコタマが飛び出した側とは逆だった。隣に立っているビルに寄りかかるように倒れ、そのまま自重を支えきれずに真ん中から折れて崩れていった。 「ゲホッ、う、うう……」 さすがのコタマも無事では済まなかった。瓦礫に寄り添うように、道路に仰向けに倒れていた。千切れた足だけではなく、全身を襲うダメージに顔をしかめた。ファーストとセカンドはビルの下敷きになっている。 「っ……久しぶりに、本気で神に祈りたい気分だぜ」 「ではそのまま祈ってて、動かないでください」 エルが空から降らせた言葉に、コタマは心底驚いた顔をした。せっかくメルに借りたワイヤーを仕掛けて待っていたのに忘れられちゃ困る、と思ってエルは、コタマに向かって頭から落下しながら、二振りの剣を構えた。 「『スカーレットデビル』――これで最後です!」 「ざけんじゃねぇ!」コタマは最後の力を振り絞って、右手の十字架からエルに向けて糸を伸ばした。左手は動かなかった。接続された糸が制御系統を奪い、エルの右手が意思に反して刃を自身の胸に向けた。 「『FTD3』だ自決しやがれぇ!」 「その前に死んでください!」 エルの加速に乗った剣と、自身の胸を貫こうとする剣。コンマ一秒が何秒にも引き伸ばされたような感覚だった。エルは時間が意味をなさなくなる中で、二つの刃が同時に目標に沈んでいくのを見た。 ◆――――◆ 茶室に戻ってからしばらく、エルとメルは言葉を失っていた。 「なんだよアンタら、何か言いなさいよ」 修道服を脱いだコタマにそう言われ、戦乙女の二人は顔を見合わせた。 「だって、その」 「ねえ?」 エルにはまだ【さっきのこと】が信じられなかった。メルも同じ顔をしているから、同じことを考えているのだろう。勝つために戦っていたし負けるつもりもなかった。しかし頭の片隅では、二人がかり程度では絶対に勝ち目がないと考えていた。それほどまでにレベルが違う。努力でどうになかる高さではない壁がある。悔しいとすら思えなくなるほどコタマとの差を認めてしまっていて、それはエルに限らず、『ドールマスター』を知る誰もがそうだった。 「でも、引き分けました」 「『ドールマスター』と引き分けたね」 「すごいこと、ですよね」 「すごいこと、だよね」 「自慢、できますよね」 「TVアニメ化くらい自慢できるね」 「は……」 「ははは……」 「「あっはははははははははは!!」」 たまらずエルとメルは抱き合った。ちゃぶ台を蹴飛ばして四畳半の上でもつれ合った。棚に背中をぶつけようと、花瓶をひっくり返して頭から水をかぶろうと二人は構わず、今朝の大学を再現するように転げまわった。じゃれ合う肉食動物の子供のような二人を、部屋の隅でコタマは冷めた目で見ていた。 「引き分けでそんなに喜ばれても……アタシはどんな顔すればいいの?」 顔をくっつけて笑い合う二人が答えてくれるはずもなく、大きなため息をついたコタマは茶室から出ていった。残された二人はその後も転げまわり、茶室の備品をひとしきり破壊してようやく転がるのをやめた。 「ふう……あれ? コタマ姉さんがいませんよ」頭からかぶった花瓶の水を切りながらエルが言った。 「もう帰ったんじゃない? ボク達も帰ろうよ。ショウくんとハナ姉に報告しなきゃ。きっと驚くよ~」 エルは落ち着いてあたりを見回して、ちょっと浮かれすぎたと反省した。データだからいくら備品を破壊しても問題ないとはいえ、これではTVアニメ化されるに当たって全国に姿が流れる戦乙女として恥ずかしい。メルの言う通り、早く退散したほうがいい。茶室の扉を開こうと手をかけようとしたその時、自動ではないはずの扉が勝手に開いた。扉の向こうには白銀のスレイプニルが立っていた。 「まだ残っていたのですか。コタマが戻ってから随分時間が経ちましたが――なんですか、この部屋の有り様は」 エルとメルの後ろを覗きこんだマシロは、茶室のあんまりな荒れ模様に顔をしかめた。 「まあいいでしょう、茶室に用はありません。二人とも、すぐにバトルの準備をしなさい」 「ちょ、ちょっと待ってよマシロ姉。いきなりバトルって言われても、ボク達さっきコタマ姉と」 「引き分けたと聞いています。コタマが珍しく難しい顔をしていたので、お二人の戦い方が気になったのです。あと一戦はできるでしょう」 冗談じゃない、とエルは言いたかった。せっかく良いことが続いて今晩は幸せ気分で眠れそうだったのに、『ナイツ・オブ・ラウンド』を相手にしてしまったら必然的に黒星がついてしまう。仮にコタマの時のように作戦が上手くいったとしても、倒壊したビルの中から無傷で出てくるマシロの姿が目に浮かんだ。 「わ、私達ちょっと用事がありまして。ではこれで――」 「待ちなさい」とマシロは横を通り抜けようとする姉妹二人の首根っこを捕まえた。 「離してマシロ姉! やーだー戦いたくない!」 「つれないことを言わないでください。お二人にはアニメに抜擢された祝辞を伝えなければなりません」 「い、いえ、気持ちだけで十分です」 マシロは聞かなかった。 「おめでとうございます。これで戦乙女型は多種多様な神姫の中から頭ひとつ飛び出したわけですね。喜ばしいことです。それはそれとしてコタマから聞きました。コタマの聞き間違いの可能性も否定できませんが――」 たっぷり時間を置いて、まるで別人のように冷たい声で言った。 「クーフランを哀れんだそうではないですか」 「ち、違います! 私達そんなつもりはありません!」 「誤解だよ! コタマ姉が変なこと言ってるだけだってば!」 「言い訳は戦場で聞きます。天使や悪魔と肩を並べるほどの大抜擢ですから、お二人が少々目線を高くしたとしても、私にそれを咎めるつもりはありません」 「咎めるつもり満々だよね!? バトルで八つ当たりする気満々だよね!?」 「謝りますから! 謝りますから勘弁してください!」 「謝罪などする必要はないではありませんか、何も間違ったことはしていないのでしょう。それにしても楽しみですね、主役級となった戦乙女殿との勝負。これから全国に剣を振るう姿が放送される戦乙女殿と予め手合わせできるなど、身に余る光栄ではありませんか」 楽しみと言いつつ、マシロの顔で笑っているのは口元だけだった。深いエメラルド色の瞳は遠くの別のものを見ていた。暴れるエルとメルに殺気のようなものを飛ばして静かにさせて、二人をステージまで引きずっていった。尻で床を磨きながらエルは、これを期に戦乙女が再々販されることを少しだけ願った。 やはりISと似たような感じになるんでしょうか。 メカ、少女、スタッフまで同じとのことで。 ううむ。 15cm程度の死闘トップへ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/970.html
前へ 先頭ページへ 朝。 朝が来た。 マスター風に言うならば清々しい朝。もしくは、爽やかな朝。 とにかく、私は内蔵された自動起動機能によって目を覚ました。 起きたからにはやる事がある。 ベッドであるクレイドルから上体を起こしての状況確認。 玄関―――朝刊が届いているのを確認、鍵もチェーンもかかったまま。異常無し 窓―――カーテンの隙間から天気を確認。予報通り快晴。鍵も閉まっている。異常無し。 ちゃぶ台―――マスターの財布を確認。休止前との異常は検出されず。異常無し。 ベッド―――マスターが眠っている、今のところ異常無し。 時刻―――現時刻、午前7時30分。講義開始が午前9時30分。マスターの行動予想。このまま起こさない場合の起床時間、9時。 行動、開始。 私はぴょいん、とクレイドルから飛び降りる。クレイドルはマスターのベッドの枕元に置いてあり、飛び降りた先はマスターの顔の直ぐそばだ。 何時もは気難しげな表情をしているが、この時だけはいつも穏やかだ。まるで死んでるみたい。 ……心なしかマスターに睨まれた気がする。次は潰されそうだから本来の仕事に移るとしよう。 ベッドの隅に立てかけられた30cmの鋼尺、それを両手で抱えるように持つ。 人間からしたらそれ程でもない重量だろうが、神姫である私からしたら結構な重量を感じるそれを、肩に担ぐように構える。 そして、腰を軸に上体を回転させる。 「―――ッ!」 ばこん、という音と共にマスターが飛び起きた。 頭を押さえて涙目でこちらを見ている。 その視線を受けながら、私はこう言うのだ。 「おはようございます、マスター。今日も良い天気ですよ」 それが私の日課。 武装神姫、ナルの一日の始まりなのだ。 今日も今日とて大学へ向かうマスター。 そしてマスターの胸ポケットの中に納まる私。 マスターが一歩歩くごとに身体が数cm程上下する。 これが人間換算だった場合、人は酷く酔ってしまうと聞いた事がある。 全てを人間に準じて作られた私がそうならないのは機械的に制御が成されているからか、それとも個体差なのだろうか。 そんな事を考えていると、空が翳った。 「……ハトか。珍しい」 マスターが呟いた。 人には聞こえそうもない小さな呟き。しかし、私の耳はそれを捉えた。 それは私の聴覚が人間よりも優れているという点もあるが、マスターの身体から声の震動が伝わったというのもある。 「このご時世、こんなところで鳩を見れるとは思いませんでした」 私は率直な感想を言った。 私に内蔵されている基本データの鳩に関する項には2036年現在、鳩の生息数が激減しており、絶滅危惧種一歩手前であると記されている。 そして、日本で野生の鳩が生息しているのは浅草だけだとも記されている。 ここは浅草から少し距離がある。飼われた鳩にしろ野生にしろ、少々貴重な体験だと言えた。 「餓鬼の頃はそこそこ見かけたんだがなぁ」 そう言うと、マスターは空を仰いだ。 その表情を窺い知ることは出来ないが、きっと私の知らない遠くを見ているのだろう。 私がマスターと出会ってもう5年になる。 この5年間、色々な事があった。 だけど、まだ私はマスターの全てを知っている訳ではない。 マスターが見たもの、マスターが感じたもの、マスターが知ったもの。 私が知らない、マスターの要素。 マスターという人間を構成するピース。 それを、私も共有する事が出来るのだろうか。 「……暇があったら実家にハト探しに行くか」 さっきよりも小さな声、だけど、はっきりとした声でマスターが言った。 その視線は真っ直ぐ前を向いている。 だけど、私にはその先にあるものがわかる気がした。 「楽しみです」 大学は、目と鼻の先だった。 今日の講義は一限から五眼までフルに入っている。 一限目は工業数学。マスターが最も苦手とする教科で、マスターは今にも死にそうな顔をしている。 私はというと、教室の机の上にぺたりと座り、周囲を伺っている。 この教室はそれほど広くは無く、人と人が接触しやすい。周囲を見れば3,4人のグループで固まってるのが殆どで、一人で難しそうな顔をしているマスターは少し浮いている。 元々人づき合いが良い方では無いので、大学内の友人は研究室の方くらいしか見た事が無い。 他愛無い雑談のざわめきの中、マスターは一人教科書を睨んでいる。 少しでも頭に入れておかないと刺されたときマズイそうだ。 暫くして、教授が現れた。その瞬間に水を打った様に静まり返る様は何時見ても面白い。 講義が始まった。 教授は説明を交えながら黒板にチョークを滑らせている。生徒はと言えば、黒板の例題や問題を写し、それを解く為に頭を絞っている。 無論、マスターもその一人だ。 シャーペンをくるくる回しながら、左手で頬杖をしている。その眼はノートに突き刺さっており、とても鋭く、険しい。 暫く微動だにしなかったマスターだが、目だけが動いた。 その先にいるのは、私だ。マスターの言わんとする事は手に取るように分かる。 確かに私は機械の類だ。計算は得意中の得意。朝飯前だ。 しかし、だ。 「マスター、こういうのは自力でやらねば意味がありませんよ?」 マスターは苦虫を噛み潰した様な表情をし、再びノートを睨んだ。 何事も経験ですよ、マスター。 講義を終えたマスターは随分と憔悴している様に見える。 覇気が無いというか、精気が無いというか。とにかく元気がない。 マスターの胸ポケットの中で揺られながら私はそう思った。 しかし、それも仕方ないのかもしれない。 その理由は次の講義がマスターの苦手科目No.2、文章演習だからだろう。 この講義、平たく言えば作文の講義なのだが、マスターは文字を書くとか本を読むとかそういう類の事が大の苦手なのだ。 レポートにおいてもそれは健在で、毎回必ず再提出の烙印を押されている。 そういう訳でマスターはこの講義が苦手という訳だ。 重々しい足取りで教室移動をするマスターは、さながら亡者だ。 瞬間、身体に衝撃が走った。突然の事だが、頭は冷静に動いている。 とりあえず、私の身体は空中にある。身体は一回転していて、頭から真っ逆様に落ちる格好だ。 とりあえず状況を確認すると、マスターが尻餅をついていて、その上に人が覆いかぶさっている。 マスターは後頭部を押さえていて、覆いかぶさってる人間はぐったりとしているのが上下逆さまに見える。 「…わわっ、大丈夫ですか~!」 何ともマヌケな声が聞こえてきた。 その声の主はマスターに覆いかぶっている人間だ。 「いいから、どいてくれ」 マスターが不機嫌そうに言った。それを聞いたその人はあたふたしながらやたら危なっかしくマスターの上からどいた。 それは女の人だった。 そして、床と私の距離はもう無い。ぶつかる。 何時もなら直ぐに体制を立て直す事が出来るのに、反応が遅れた。どうしよう、とか思ってたら、 「……ゎっ」 思わず変な声が出た。それは身体に慣性の力が働いた事による反作用だ。 視界は未だ上下逆転したままだ。前髪が床についている 足首を見ると、誰かに掴まれている。 白い手、白い腕、白い身体、白い髪。 「……ストラーフ?」 思わず疑問が口に出た。だって、そこにいたのは白い神姫。 白い神姫と言えばアーンヴァルな訳だけど、その顔はどう見たって私と同じ顔。ストラーフなのだから。 しかし、このストラーフ無表情である。目が合っているのにあちらさんは瞬き一つしないで私をじっと見ているのだ。 なんて事考えていたら、彼女は唐突に私の足首から手を放した。 手を付いて一瞬逆立ちの体勢、今度は身体全体を使ってくるっと周る。よし、上下正常な世界だ。 私は改めてストラーフを見た。私は量産機なので私と同じ顔を見るのは少なくない。その中には様々なカラーバリエーションのストラーフがいたが、ここまでまっ白いストラーフは初めて見た。 「わ、私ぼー、としてて、その、あの……」 頭上からマヌケな声が降ってくる。その声の主はマスターに対し平謝りだ。 「……今度から気を付けてくれ」 マスターはバツが悪そうに言うと、私を拾い上げた。 「大丈夫か?」 「あのストラーフのお陰で」 私はマスターの手の中、視線をあのストラーフへと向けた。 そのストラーフはマヌケな女の人に抱きかかえられている。 マスターの逡巡する気配が漂った。 「……名前を聞いても良いかな?」 その視線はマヌケな女に人に向けられている。 当の本人は、一瞬ポカーンとした後、金魚みたいに口をパクパクさせている。 かと思えば大きく深呼吸をし始めた。3度深呼吸をした彼女はようやく口を開いた。 「えと、その、わた……私、環境心理学科の、君島、です」 まるで息も絶え絶え、死にそうな様子で君島さんとやらは言った。 「それで、この子は、アリスって、言います」 そういって胸に抱える白いストラーフ、アリスを一瞥した。 しかし、このアリスとやら、マスターである君島さんと違い本当に無表情だ。 「僕は倉内 恵太郎。君島さんと同じ環境心理科です」 マスター自慢の猫被りが発動した。さっきまでの不機嫌ぷりは何処へやら、今は完璧な爽やか系好青年だ。 「この子はナル」 「どうも」 私は軽く会釈した。 「アリスちゃん、僕のナルを助けてくれてありがとう」 マスターの言葉を無表情で受け止めるアリス。それに対して君島さんはやたらおどおどしている。ここまで来ると面白い。 「……いい」 アリスがようやく口を開いた。にしても驚くほど無機質な反応だ。……CSC入ってないんじゃないだろうか。 その時である、場違いな声が響いたのは。 「おはよう! けーくん!」 どっから顕れたのか、孝也さんがマスター目掛けて飛び付いてきた。 「おはよう……っと!」 そしてマスターは孝也さんの顔面に右フックを叩き込んだ。 孝也さんは派手な音と「ぐべぇ」みたいな呻き声を上げてゴミ箱に突っ込んじゃった。 「ふぇ?…え? え?」 案の定、君島さんが目を白黒させている。 「ああ、いつもの事ですよ」 マスターは相も変わらず爽やかを装っている。 「そう、僕とけーくんのスキンシップは何時でも過激なんだ……」 何時の間にやら孝也さんがマスターの傍らに寄り添っている。相変わらず復活が早い。 「そ、そう、なんですか」 駄目だ、完全に怯えている。 「マスター」 「……じゃあ、次の講義がありますんで僕はこれで」 私の言わんとする事が伝わったようだ。 マスターは孝也さんの首を鷲掴むと、笑顔で歩き始めた。 「ところでけーくん、今の人は? ……けーくん、首が痛いよ~。……けーくん、絞まってる! 何か凄い締まってるよ!? 何! 僕が何かした!? 嫌だ! 離して! 話せば解る!……アーーーッ!」 残された君島は暫し茫然としていた。 まるで嵐のような出来事に頭の処理が着いて行っていないのだ。 「……ましろ」 「ふゃいっ!?」 普段は全くの無口&無表情なアリスが君島を、君島ましろの名を呼んだ。 その事に君島は飛び上るほど驚いた。自分の神姫なのに。 「……紅」 一言。言葉ではなく単語。 アリスのその短い説明でも、君島はすぐに理解出来た。 「あ、あの人が、そう、なの?」 口調は変わらない。しかし、その目の鋭さは先ほどまでの少女とは到底思えない鋭さだ。 その鋭い視線を恵太郎が去って行った方向へと投げかける。 見えない何かを見るように、見えない何かを値踏みするように。 「じ、じゃあ、やっつけなきゃ、あの人」 まるで近くのコンビニに買い物に行くような気軽さ。 反して、命を賭けた血戦に赴くような切迫さ。 奇妙で歪んだその少女の名は君島ましろ。 ましろを知る人間は彼女をこう呼ぶ。 白の女王、と。 先頭ページへ 次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1566.html
ハウリングソウル 第一話 『廃墟にて』 今はもう誰もいない。かつてはそれなりに賑わっていたであろう街中を、一つの影が疾走していた。影は両の手にカロッテTMP・・・通称サブマシンガンを握っている。 影が向かう先にはマスクをつけた特殊部隊の隊員のような人影・・・・一体のMMSが立っていた。 そのMMS・・・兎型MMSヴァッフェバニーは走り寄る影に向かって両手で構えたSTR6ミニガンを連射する。 その弾丸の嵐を影は僅かに身を捻るだけで回避した。 「(・・・・・・・・馬鹿な)」 兎型MMS、ヴァッフェバニーは心の中で舌打ちをした。 「(私が今まで戦ってきた犬型はここまでのスピードを持った者はいなかった。一体奴は何者なんだ!?)」 ヴァッフェバニーはミニガンを的確な狙いと速度で連射する。今は何よりも、奴を近づかせないことが先決だ。 事実、先程から疾走する影・・・・犬型MMSハウリンは彼女に近づくことが出来なかった。付かず離れずの距離を保ちながら右へ左へとこちらを翻弄している。 「(奴の狙いは・・・・・こちらの消耗か?)」 だとすると敵の犬型は彼女を見くびっている。彼女はSTR6ミニガンを二挺装備している。事実上、弾が切れる心配は無い。その前にタイムアップでドローとなるだろう。 彼女は突撃せず後方支援を目的としていたのだ。その分装備も重装備である。 しかしつい先程、仲間の反応が消えた。恐らく目の前の犬型にやられたのだろう。 彼女達はタッグで勝負を始めたはずだった。にも拘らずこちらの損害は大きくあちらは事実上無傷である。 「・・・・・面白いじゃないか」 マスクに隠された顔で不適に笑う。ならこいつを倒せば仲間の敵も討てると言うことだ。だが今へたに動けばこちらがやられる。二人揃ってやられるよりも、まだ引き分けのほうが戦略的にましだろう。だが向こうが何かミスをしたならば一気に畳み掛ける。取りえず今はこの拮抗状態を崩さずに制限時間まで持ち込めば ――――――――――― と、動き回っていた犬型が突如として停止した。 彼女はその隙を逃さずにミニガンの掃射を食らわせる。 銃口から盛大なマズルフラッシュが瞬き一瞬、その場にいた全員の視界を遮った。 そしてマズルフラッシュが納まった後・・・・ヴァッフェバニーが掃射を止めた後には、ボロボロのテンガロンハットだけが残されていた。 「・・・・・中身はどこに行った!?」 右、左と辺りを見渡してみるもあの犬型はどこにもいない。まるで消えてしまったかのように。 「(消えた?・・・・そんなはずは)」 困惑する彼女の頭上が突如として曇った。 太陽に雲がかかったのだろうか? 否、このゴーストタウンは仮初の町。空はコンピューター制御の虚像である。確かに雲も太陽も存在するがそれはただあるだけで動いたりなどはしないはずだ。 ならば一体・・・・・・・? 彼女は上を見た。 そして廃墟となったビルの屋上に、巨大なガトリングを四問備えた巨体を見つけた。 悪魔型MMSストラーフ。 確か犬型とタッグを組んでいた神姫である。悪魔型の背面ユニット、チーグルと呼ばれる機械式副腕に取り付けられたガトリングは全てがこちらを狙っていた。 彼女は完全に失念していた。こっちがタッグである以上、向こうもタッグであることを。 「ハウ・・・・・・時間稼ぎ、ありがと」 屋上の悪魔型がそう呟く。 「結構辛かったよノワール。あとでたっぷり休ませて貰うからね?」 いつの間にそこにいたのか、フィールドに配置されているゴミ箱のオブジェの傍にハウと呼ばれた犬型MMSが立っていた。 ・・・・ハウリンだからハウなのだろうか? 「くくっ・・・・はははははっ」 ヴァッフェバニーは思わず吹き出していた。 今の状況とそこに追い込まれた自分。そしてこの二人の手腕に。 「兎型の人、降参しますか?」 ハウと呼ばれた犬型がこちらにTMPを向けている。そして屋上からはノワールと呼ばれた悪魔型のガトリングが自分を狙っていた。 「ハウと言ったな? 私が一ついいことを教えてやる。・・・・諦めないことが勝利への近道だ!!」 ヴァッフェバニーはミニガンを放り出し腰のカロッテP12に手をかける。この距離なら彼女は外さない。手をかける速度がもう少し速ければ。 ハウとノワールの銃は彼女はミニガンを放り出した瞬間に火を吹いていた。 TMPはP12を弾き飛ばし、ガトリングはヴァッフェバニーの体に命中していた。 ヴァッフェバニーは声も無く倒れこむ。それと同時に試合終了を告げるブザーが鳴った。 「マスター! 試合終わりましたよ!」 試合を終えたハウとノワールが神姫センターに設置された専用筐体から出て来た。私はそれを見て思わず笑ってしまう。 何と言ったってハウの後ろにノワールが隠れるように出て来ているからだ。妙に微笑ましく思った私は彼女達に笑いかけてこういった。 「二人ともお疲れ様だ。今日は時間も遅いしもう帰ろう」 「そうですね。ノワールも疲れてる・・・ノワール?」 「・・・・・・・マイスター」 と、ハウの後ろに隠れていたノワールが一歩進み出る。 「もっと・・・・遊びたい。・・・・今度は、神姫バトルじゃなくて・・・・普通のゲーム・・・」 あまり表情を変えずに、でも控えめにノワールは言った。 ああもう。 なんでこの子等はこんなに可愛いんだろう。私が結婚適齢期を逃したらきっとこの子達のせいだ。 「しょうがないな・・・・ハウもそれでいいかい?」 「マスターがそれでいいなら。お姉ちゃんの意見には逆らえません」 そういってハウは軽く舌を出す。畜生、可愛いよ。 私は二人を手のひらの上に乗せ、そのまま胸ポケットに入ってもらった。 入るときに二人が少し窮屈そうにしていたのはもうしょうがないだろう。だって私だって女だし。 「それじゃあ行こうか。二人は何がしたい?」 「アレがいいです! レーシング!」 「・・・・・競馬」 「「はい!?」」 2036年、Multi Movable System------MMSと呼ばれる全高15cmのフィギュアロボが当たり前に存在する世界。 中でも一般的なのが『神姫』と呼ばれる女性型MMSである。 人々は彼女達に思い思いの武装を施し、互いの神姫を戦わせていた。 様々な武装を付け、戦場へと赴く彼女達を、人は『武装神姫』と呼んだ。 NEXT
https://w.atwiki.jp/2chbattlerondo/pages/347.html
ポイントバトル http //www.shinki-net.konami.jp/event/pointbattle/ 開催期間内でバトルポイント(bp)を獲得して競う大会形式のバトル。 各大会に設けられた入賞条件を達成することで、賞品としてアイテムや称号などが獲得できる。 ルール バトルポイント(bp) 開催中・開催予定 終了済み2009/12~2010/02 2010/03~2010/04 2010/07~2010/09 2010/10~2010/12 2011/02~2011/04 コメント ルール ルールは大会によって異なる場合がある。 Bクラス/Lv150以下/無制限の3つのうち、神姫が参加できるものから毎回1つ選び、通常通りマッチングを待ってバトルを始める。 入賞条件 「~bp達成」は最初の達成時に賞品を獲得(達成後に減少した場合の没収、および再度達成した場合の再獲得はなし)「期間終了時~」は大会期間終了後に獲得(ゲーム内メールでの通知あり)どちらの条件で獲得する場合もアイテムは入賞1体につき1つbp達成条件のみの大会で全条件を達成した神姫は同じ大会に参加できない 失格条件 条件を満たした神姫は失格となる再エントリーは可能だが、消費アイテムを使用する場合は再度消費される再エントリーした場合は参戦回数制限がリセットされる ルール詳細 大会のバトルルール 参加可能コア 指定されたコアの神姫のみ参加可能(リペイント区別あり) 参加可能クラス 未使用 参加可能オーナーグレード 未使用 LV制限 制限以上のレベルの神姫のみ参加可能 1日の参戦回数制限 1体の神姫は午前0時を基準に1日の参戦回数以下まで参戦できる(「オーナー」ではない) バトルポイント(bp) bpは大会別・神姫別に所持する。 基本増減 +100bp 勝利増減 勝利すると +100bp 完勝ボーナス 「圧倒的な差(自LP残80%以上)」で勝利すると +100bp 完敗ペナルティ 「圧倒的な差(敵LP残80%以上)」で敗北すると -200bp レベル差ボーナス 「自分より高レベルの相手」に勝利または引き分けると 1Lv = +1bp(上限不明、160vs330の+170bpまで確認) 連勝ボーナス 1勝目から+20bpづつ加算、上限+200bp(10連勝) 完敗しない限りポイントは減らず、0以下にはならない。ただし0以下を失格条件とする大会もある。 大会のポイントランキングは詳細の右下、王冠マークのボタンから確認可能。 上位1000位(1000体)が表示され、自分の神姫、在籍クラスやコアによる絞込みが可能。 自分の神姫は黄色で表示され、ランキングの下に別枠で一番成績の良い1体が表示される。 順位が重複した場合の並び順は不明。先着やセットアップ日ではない模様。 ランキング横のボタンはWebブラウザを起動し、公式サイト上の開催概要を表示する。 タブを「詳細」から「戦績」に切り替えると、エントリーしている自分の神姫の戦績が表示される。 ポイント算出は「3周年記念称号獲得杯(10/04/27)」開催と同時に変更されている。以下はそれ以前の仕様。 + 3周年以前のポイント計算式 基本増減 勝利+200 / 敗北-200 / 引き分け-100 レベル差ボーナス 勝利時 200±α敗北・引き分け時 ±αのみLV差に応じて自分が低ければ+α、高ければ-α同レベルでは1勝+400 / 1敗-200αの上限は200で、合計値が0を下回る事は無い※αの算出式は不明(1Lv=1bpではないパターンがある) 連勝ボーナス 2~5連勝 連勝数*50(100~250) 6連勝 350 7連勝 500 8連勝 650 9連勝 800 10連勝以上 1000 同レベルでの連勝時の獲得ポイント 連勝数 獲得bp 累計bp 1勝 400 2連勝 400+100=500 900 3連勝 400+150=550 1450 4連勝 400+200=600 2050 5連勝 400+250=650 2700 6連勝 400+350=750 3450 7連勝 400+500=900 4350 8連勝 400+650=1050 5400 9連勝 400+800=1200 6600 10連勝 400+1000=1400 8000 11連勝 9400 12連勝 10800 10連勝以降 6600+1400*(連勝数-9) 8連勝で5000bp以上に、12連勝で10000bp以上を達成する。 上へ戻る 開催中・開催予定 並びは開催順。 大会名 開催期間 参加条件・ルール 入賞条件・賞品 補足 チケット獲得杯-008 11/05/20 10 00~11/05/26 23 55 Lv20以上1日10戦 1000bp エントリーチケット3000bp 5000PP500位 ふくびきチケット 上へ戻る 終了済み 並びは終了した順。区切りの基準は大会開始日。 2009/12~2010/02 大会名 開催期間 参加条件・ルール 入賞条件・賞品 補足 期間限定テスト用 09/12/02 16 00~09/12/03 16 00 3000bp ふくびきチケット 不具合調整中に開催された予定外の大会 冬季迷彩型参戦記念!「冬季迷彩杯」 09/12/03 18 00~09/12/10 18 00 10000bp 称号「迷彩仕様」 当初の開催予定は「12/01 14 00~12/07 14 00」 ホーリィナイト杯 09/12/17 14 00~09/12/25 12 00 SNT TSUGARU 300位ふくびきチケットアイテム「レイディアントボウ(ピンク)」 12/07 18時頃に30→100位12/08 20時頃に100→300位 西園寺からの挑戦状 09/12/25 12 00~10/01/01 00 00 1000位ふくびきチケットアイテム「フラガラックα」 違法改造神姫優勝阻止(オーナー「西園寺彩音」) 丑→寅杯 10/01/04 14 00~10/01/11 14 00 TIG TIGRISCAL VITULUS 100位称号「もーもー」「タイガー」 1回の入賞で称号2つ 神姫センター店長代理からのお礼1 10/01/15 16 00~10/01/22 24 00 5000bp 称号「キューティー」10000bp 称号「○○○」500位 称号「コレクター」100位 ふくびきチケット 神姫センター店長代理からのお礼2 10/01/21 18 00~10/01/27 24 00 5000bp 称号「煌く」10000bp 称号「キレカワ」500位 称号「巨匠」100位 ふくびきチケット あなたも鬼です杯(節分杯) 10/01/28 18 00~10/02/04 24 00 5000bp 称号「鬼」10000bp 称号「鬼神」100位 称号「鬼っ子」 白が黒で、黒が白杯 10/01/28 18 00~10/02/04 24 00 AGC WERKSTRADVS VALONAAGC bk.WERKSTRADVS wh.VALONA 3000bp 称号「白き」6000bp 称号「黒き」10000bp 称号「リペ」100位 称号「リペイント」 ミッションPB【通常攻撃禁止/SP消費半分】(ミッションPB_01) 10/02/09 18 00~10/02/11 24 00 通常攻撃禁止SP消費半分 5000bp 称号「スキル」100位 ふくびきチケット 称号獲得杯-001- 10/02/05 18 00~10/02/12 24 00 5000bp 称号「怪物」10000bp 称号「モンスター」15000bp 称号「ドラゴン」300位 ふくびきチケット I LOVE オーナー?杯(バレンタイン杯) 10/02/08 18 00~10/02/14 24 00 1000bp 称号「義理」5000bp 称号「チョコレート」10000bp 称号「ラブリー」100位 称号「本命」 ミッションPB【スキル禁止/渦巻き】(ミッションPB_02) 10/02/13 18 00~10/02/15 24 00 スキル禁止渦巻き 5000bp 称号「サバイバー」100位 ふくびきチケット COOLにアタックは誤り記載修正済 ミッションPB【近距離攻撃禁止+α】(ミッションPB_03) 10/02/19 18 00~10/02/21 24 00 近距離攻撃禁止重量2以下の武器禁止 5000bp 称号「スナイパー」100位 ふくびきチケット 作戦指示無効/SP消費2倍は誤り記載修正済 称号獲得杯-002- 10/02/16 18 00~10/02/24 24 00 5000bp 称号「グルメ」10000bp 称号「美食家」15000bp 称号「料理人」300位 称号「採食」100位 称号「肉食」 ミッションPB【作戦指示無効】(ミッションPB_04) 10/02/22 18 00~10/02/24 24 00 作戦指示無効 5000bp 称号「指揮官」100位 ふくびきチケット ミッションPB【遠距離攻撃禁止/射撃武器禁止】(ミッションPB_05) 10/02/26 18 00~10/02/28 24 00 遠距離攻撃禁止射撃武器禁止 5000bp 称号「ブレイド」100位 ふくびきチケット わたしがお雛様杯 10/02/25 18 00~10/03/04 24 00 1000bp 称号「お姉ちゃん」5000bp 称号「お姉さん」10000bp 称号「ガール」100位 称号「娘」 上へ戻る 2010/03~2010/04 大会名 開催期間 参加条件・ルール 入賞条件・賞品 補足 帰ってきた西園寺 10/03/01 18 00~10/03/09 24 00 5000bp 称号「マニア」10000bp 称号「無双」15000bp 称号「勝利者」100位 称号「違法」10位 称号「ファイター」 西園寺彩音はシティ相当のVR(ブルー)で固定西園寺の全神姫が100位以下の場合アイテム「フラガラックβ」を全参加者に1本配布03/02 11時頃までは西園寺とのみマッチング以降は平常通り対人マッチングも有り03/02 19時頃公式発表(仕様変更は認めていない) ミッションPB【SP消費が常に2倍】(ミッションPB_06) 10/03/12 18 00~10/03/14 24 00 SP消費2倍 5000bp 称号「チャージ」10000bp 称号「エスパー」15000bp 称号「新型」100位 ふくびきチケット10位 称号「王」 お返しは忘れずに杯 10/03/10 18 00~10/03/20 24 00 1000bp 称号「お兄ちゃん」5000bp 称号「お兄さん」10000bp 称号「有頂天」500位 エントリーチケット100位 称号「絶好調」 ミッションPB【コミカル&キュート】(ミッションPB_07) 10/03/18 18 00~10/03/20 24 00 COMICALにアタックCUTEにガード 200bp 称号「と」500bp 称号「な」1000bp 称号「かつ」300位 称号「合格」100位 ふくびきチケット COMIKALの誤植あり 称号獲得杯-003- 10/03/21 18 00~10/03/27 24 00 1000bp 称号「です」2000bp 称号「から」5000bp 称号「まで」300位 称号「先生」100位 ふくびきチケット 称号獲得杯-004- 10/03/27 18 00~10/04/03 24 00 1000bp 称号「の」2000bp 称号「だから」5000bp 称号「地上」300位 称号「地球」100位 ふくびきチケット 称号獲得杯-005- 10/04/03 18 00~10/04/10 24 00 1000bp 称号「黄」2000bp 称号「蒼」5000bp 称号「赤」300位 称号「金ぴか」100位 ふくびきチケット 称号獲得杯-006- 10/04/10 18 00~10/04/17 24 00 1000bp 称号「形」2000bp 称号「系」5000bp 称号「型」300位 称号「式」100位 ふくびきチケット 3周年記念称号獲得杯 10/04/27 18 00~10/05/16 23 55 1000bp 称号「3周年」2000bp 称号「記念」5000bp 称号「祝」5000位 称号「チーム」1000位 ふくびきチケット bp増減変更開始 上へ戻る 2010/07~2010/09 大会名 開催期間 参加条件・ルール 入賞条件・賞品 補足 チケット獲得杯-001- 10/07/23 10 00~10/08/02 12 00 Lv10以上1日5戦 1000bp 称号「夏」3000bp 称号「熱い」5000bp エントリーチケット300位 称号「燃える」100位 ふくびきチケット 27日14時まで参戦数制限の不具合修正に伴い29日23 55より延長 サキュバス杯-001- 10/08/06 10 00~10/08/12 23 55 エントリーチケット1枚0bp以下失格Lv10以上1日10戦 3000bp 称号「マシン」5000bp アイテム「サキュバスメイル(銀) 胸」10000bp ふくびきチケット300位 称号「ロボ」100位 称号「超」 以降全大会でLv10以上/1日10戦制限 チケット獲得杯-002- 10/08/13 10 00~10/08/19 23 55 3500bp エントリーチケット5000bp 称号「♪」7000bp ふくびきチケット300位 称号「!」100位 称号「☆」 サキュバス杯-002- 10/08/20 10 00~10/08/26 23 55 エントリーチケット1枚500bp開始0bp以下失格 3000bp 称号「狩人」5000bp アイテム「サキュバスメイル(銀) 肩」10000bp ふくびきチケット300位 称号「ハンター」100位 称号「神秘」 チケット獲得杯-003- 10/08/27 10 00~10/09/02 23 55 3500bp エントリーチケット5000bp 称号「妖精」7000bp ふくびきチケット300位 称号「モード」100位 称号「フェアリー」 新型神姫出撃杯 -001- 10/09/10 10 00~10/09/16 23 55 WAL ALTLENEWAL ALTINESAGL ARNVAL Mk.2DVL STRARF Mk.2 1000bp 称号「★」3000bp アイテム「アイスキャンディ」5000bp 称号「新規」5000位 5000PP3000位 エントリーチケット 当初の開催予定は「09/03 10 00~09/09 23 55」 サキュバス杯-003- 10/09/17 10 00~10/09/23 23 55 エントリーチケット1枚500bp開始0bp以下失格 3000bp 5000PP5000bp アイテム「サキュバスメイル(銀) 腕」10000bp ふくびきチケット5000位 称号「スター」500位 称号「宇宙」 上へ戻る 2010/10~2010/12 大会名 開催期間 参加条件・ルール 入賞条件・賞品 補足 パワーアップポイントを獲得せよ! 10/10/08 10 00~10/10/14 23 55 3000bp 5000PP チケット獲得杯-004- 10/10/15 10 00~10/10/21 23 55 COMICALにアタックCUTEにガード 2000bp 1000PP3000bp エントリーチケット5000bp 5000PP500位 称号「ビューティフル」300位 称号「とっても」 サキュバス杯-004- 10/10/22 10 00~10/10/27 23 55 エントリーチケット1枚500bp開始0bp以下失格 2000bp アイテム「サキュバスメイル(銀) 腰」5000bp 5000PP10000bp ふくびきチケット1000位 称号「者」500位 称号「師」 パワーアップポイントを獲得せよ!2 10/10/29 10 00~10/11/04 23 55 3000bp 5000PP チケット獲得杯-005- 10/11/05 10 00~10/11/11 23 55 CUTEにアタックCOOLにガード 2000bp 1000PP3000bp エントリーチケット6000bp ふくびきチケット1000位 称号「 」300位 称号「プリンセス」 サキュバス杯-005- 10/11/12 10 00~10/11/18 23 55 エントリーチケット1枚 3000bp 5000PP5000bp アイテム「サキュバスメイル(銀) 腿」10000bp ふくびきチケット1000位 称号「。」500位 称号「花嫁」 チケット獲得杯-006- 10/11/19 10 00~10/11/24 23 55 渦巻き 2000bp 1000PP3000bp エントリーチケット6000bp ふくびきチケット1000位 称号「ラブ」300位 称号「セクシー」 忍者でござる杯 10/11/29 10 00~10/12/05 23 55 NJA FUBUKINJA MIZUKI 2000bp 1000bp3000bp エントリーチケット5000bp 5000PP1000位 称号「でござる」300位 称号「使者」 サキュバス杯-006- 10/12/06 10 00~10/12/12 23 55 エントリーチケット1枚 3000bp 5000PP5000bp サキュバスメイル(銀) 脛10000bp ふくびきチケット1000位 称号「ドキ」500位 称号「輝く」 公式では「サキュバスメイル(銀):ブーツ」 新年おめでとう杯 10/12/30 10 00~11/01/03 23 55 2000bp アイテム「注連飾り」 上へ戻る 2011/02~2011/04 大会名 開催期間 参加条件・ルール 入賞条件・賞品 補足 チケット獲得杯-007- 11/02/04 10 00~11/02/13 23 55 2000bp 1000PP3000bp エントリーチケット6000bp アイテム「フラガラックδ」1000位 称号「ご主人」300位 称号「恋人」 サキュバス杯-007- 11/02/14 10 00~11/02/23 23 55 エントリーチケット1枚 3000bp 5000PP5000bp アイテム「サキュバスホーン(銀)」10000bp ふくびきチケット1000位 称号「ママ」300位 称号「パパ」 パワーアップポイントを獲得せよ!3 11/04/14 10 00~11/04/20 23 55 3000bp 5000PP 新型神姫出撃杯 -002- 11/04/21 10 00~11/04/27 23 55 HHD GABRINENTF RENGEFRT PARTIOSQR POMOCKSST HARMONEY GRACENRS BRIGHT FEATHERCHS KOHIRUSPN MERIENDA 3000bp 称号「新入生」5000bp 称号「未来」5000位 5000PP3000位 エントリーチケット 公式では獲得できる称号が入れ替わっていた(後に配布)エントリーチケットを「3000枚(ただし255でストップ)」配る不具合が発生 サキュバス杯-008- 11/04/29 10 00~11/05/05 23 55 エントリーチケット1枚Lv20以上1日15戦 3000bp 5000PP5000bp サキュバスメイル(金):脛10000bp サキュバスホーン(金)1000位 称号「瞳」500位 称号「美しい」 公式では「サキュバスメイル(金):ブーツ」 パワーアップポイントを獲得せよ!4 11/05/06 10 00~11/05/12 23 55 3000bp 5000PP サキュバス杯-009- 11/05/13 10 00~11/05/19 23 55 エントリーチケット1枚Lv20以上1日15戦 2000bp 5000PP4000bp サキュバスメイル(金):腕7000bp サキュバスホーン(金)1000位 称号「必殺」500位 称号「炸裂」 コメント レベル差ボーナスの算出法が不明です 差が小さいうちは1=1のようですがLV差が大きくなると大量に増えます 自分の(相対的ではない)レベルやクラスなども関係しているかもしれません -- (名無しさん) 2009-12-12 12 38 45 参加してるとAIがどんどん狂っていく 移動スキル忘れたり回避指示で防御しだしたり -- (名無しさん) 2009-12-29 18 49 06 参加条件とルールを統合、失格を廃止 失格条件のある大会の開催時は参加条件・ルール欄への記載を検討していただく思います -- (名無しさん) 2010-02-12 19 56 54 帰ってきた西園寺についてですが、オーナーとステージが西園寺とVRで固定となっていますが 違うオーナーとディープシーであたったので固定ではないとおもわれます。 -- (名無しさん) 2010-03-02 11 18 44 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2410.html
同日 20:00 アフガニスタン南部 パキスタン国境付近 ポイント216 “テキサス『特技兵』” 《合流はせずに、予定通り建物の中を確認しろ》 モンタナちゃんがチラッとこちらに視線を向けると手を振ってきたので、思いっきり振りかえしてあげる。 《テキサスちゃん……もしかして、わざとやってる?》 もう一度、振り返ったモンタナちゃんが一瞬驚いたような顔をしたあと。なんだろう、とってもげんなりした感じ。 「えっ、何?」 《もういいよ。とにかく、そっちの明かりが漏れてる建物から順に調べてね》 そういうとモンタナちゃんは崩れた土壁の隙間に体を滑り込ませる。 「変なモンタナちゃん」 相棒がどこか変なのはいつものことだし。とりあえず土壁をよじ登り、明り取りの窓から中を覗くと…… 「ハイヤー! フナドゥカスーヤ」 「ヒュー、サィーダンコンブゥラ」 見るからに怪しいおじさんたちが、机の上に爆弾っぽいものを並べていた。 「えっと、ここにいるのは六人。あと爆弾がいっぱい」 《物騒ね、こっちにも何人かいるはずなんだけど、暗くてよくわからないの。もう少し調べてみるね》 モンタナちゃんとじょーほーをきょーゆーして、人数と爆弾のことを軍曹さんに報告して窓から、よっ、とばかりに飛び降りる。 「わぁ、お月様が大きい!」 上空のシャドーとのシステムリンクで、周辺の情報がリアルタイムで送られてくるんだ。 土壁くらいなら彼が透視してたりするのでボクがちょっと中を見たのは、彼が見ている机の周囲に集まっているのが、兵隊なのか偉い人なのか、というチェックだよ? 難しいことはわからないけど、それがわかればこうげきたいしょうが定まってくうぐんがくうばくするんだって。 《テキサス、そこはもう大丈夫だ 次は3ブロック先の集会場の熱源を探れ》 「はいっ!」 元気よく答えボクは走り出す。 なんだかわからないけど、軍曹の声を聞くと元気になるし力がわいてくる。ボクが武装神姫だからだと思うけど。モンタナちゃんも軍曹も。別の何かとして扱ってるんだと思う。やっぱり難しいことはわからないけどそれは…… 《嘘でしょ?》 急に、モンタナちゃんの声が無線から聞こえて振り返ったけど。それっきり何も聞こえなかった。 前へ/TOP/次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/368.html
神姫狩りシリーズ 04 ORIGIN 篠房財閥。 古くは華族の旧家であり、貿易で財を築いた一大グループである。最近は電子産業にも力を入れており、篠房技 研が武装神姫市場への参入も表明している。 その参入第一弾として、騎士型MMS「サイフォス」と武士型MMS「紅緒」のロールアウトも決定している。 今までの神姫とはまた違うコンセプトの元に作られた神姫である。 「で。その篠房財閥のお嬢様が、何の用なんだ?」 マンガかなにかのよーなバカげた大きさの篠房邸に三人はそのまま招待された。ちなみに鶴畑の使いはそのまま トンズラしたことも追記しておく。 これまたバカみたいな応接間に通された静真たち。その正面に、篠房留美那は腰掛けて優雅に紅茶を飲んでいる 。 「何の用、と申されましても……」 「用件が無ければ、俺たちみたいな庶民もド庶民をあんたみたいな金持ちのお嬢さんが招待する理由が無いだろ」 警戒していう静真に、ベルは静かに言う。 「そういう風に身構えていると、底の浅さが露呈するわよ。コンプレックス丸出しだし」 「やかましい。お前はちっとは黙ってろ」 ベルを一喝して静真は向き直る。 「何が目的だ。あんたも香織さんの店を狙ってんのか?」 「まさか」 留美那はその問いに笑顔で否定する。 「神姫をレンタルする事業、というのは私たちも面白いと思っています。応援こそすれ、あの人たちのように邪魔 に思って排除する、なんてことはいたしません」 「……本当か?」 「はい」 「ならいいが……だったら何のつもりかますますわからん。鶴畑へのあてつけか?」 「そんな意味の無い幼稚なことをするように見えますか?」 「人間は外見じゃ判断できないだろ」 「偏見やねぇ」 香織が茶請けのクッキーをかじりながら口を挟む。 「人間不信……?」 恋も口を挟む。 「だから黙ってろお前ら。」 「……お話どおり、面白い方たちですね」 「……俺たちを知ってるのか」 「はい。失礼かとは思いましたが、貴方のことは調べさせていただきました、桐沢静真さん」 「何?」 「上媛学園高等部、16歳。ロボット研究部所属。成績は中の下、運動神経はいい。過去に補導暦あり。両親は海外 出張で現在、島田重工勤務の兄と二人暮し」 「……天下の篠房財閥ってのは、他人をこそこそと嗅ぎ回るのが趣味なのか?」 さらに警戒心を強め、椅子から腰を浮かせる静真。留美那はそれを気にせずに言葉を続ける。 「所持神姫は……タイプストラーフ、ベル・ゼ・ヴァイス、いえ……」 一呼吸置き、静香に、はっきりと言った。 「ロストナンバーズ。00d――――悪魔型『タイプベルゼブブ』ジ・オリジン」 その言葉に、静真とベルの表情が変わる。「警戒」から「敵意」のそれへと。だが、留美那がやんわりとそれを 手で遮る。 「どうこうするつもりがあるのなら、とっくにしてます。信じてください。私には貴方たちに害意はありませんか ら」 「どうだかな。余裕の裏返し、ってこともある」 「……じ・おりじん……?」 恋のつぶやきに、香織が答える。 「ジ・オリジン。簡単に言えば、神姫のオリジナルと呼ばれるMMSよ。開発過程で生まれたプロトタイプやテス トタイプ。市場には流通するはずのない、開発元に保管・管理されるか、あるいは廃棄されるはずの……伝説のM MSや」 「ええ。もっとも、「オリジナル」というのも多少は語弊がありますが……ともあれ、そのベルさんは、ストラー フの原型として生み出された幾つものMMSのひとつ、で――間違いはありませんね?」 しばし、場を沈黙が包む。その静寂を破ったのはベルのため息だった。 「そうね。そこまでどうやって調べたのか知らないけれど。貴女の言葉は正しいわ」 「おい、ベル」 「ここでの圧倒的弱者は私たちよ、静真。なら弱者らしく開き直りましょう?」 余裕の表情すら浮かべ、ベルは言う。 「弱者って台詞かよ、そのツラ。まあ確かにな、ここまできたらジタバタしたって仕方ねぇ。 だけどなお嬢様。たぶんあんたはひとつ、大きな勘違いしてるぜ」 「勘違い……ですか?」 「ああ。「ジ・オリジン」って奴は、別に「超強力な神姫のプロトタイプ」なんかじゃねぇ。そもそも要するに、 だ。「商品にならない」って理由で却下されたモデルにすぎないんだよ」 静真は肩をすくめていい放つ。 確かに、「試作品」というものはまず作られて試用され、規定に合うかどうか、要求されるスペックを満たして いるかどうか、バグはないかどうか――などを文字通りに「試す」ためのものだ。 どこぞの前世紀の国民的アニメに出てくる白いモビルスーツのように、「持てる技術の粋をこめて試作しました 、でも量産型はそれに遥かに劣ります」などというものはまず存在しないと思っていいだろう。 「コイツだって基本スペックは十分に正規流通品の、武装神姫バトル管理協会のレギュレーションの範囲内だよ。 あんたらが何を聞きつけて何を調べたのかは知らないが、利用しようとしたって価値なんかないぜ」 どうにでもなれ、という表情で椅子に深くこしかけて静真は言う。 「価値なら、ありますわ」 留美那は笑う。 その笑顔に、静真は身構える。 「サインください☆」 そして全員がこけた。 「…………………………………………………………は?」 「だってだって、普段では絶対に見れないレア中のレアですよ!? 数千数万と存在する神姫の中でも超レア! これでサインを貰おうとしないなんて神姫オーナーの沽券にかかわる問題です!!」 力説であった。 「ああ、そうですか……」 気圧されながら静真は敬語で答える。 「で、どこにサインすればいいのかしら」 まんざらでもないという感じでサインしてあげる気満々のベルであった。 「それではエクエスの鎧に……いやまってください、鎧だと戦ってキズモノになる可能性が……うん、それは駄目 ですわ。仕方ないですわね、オーソドックスに色紙にお願いするしか……」 ぶつぶつと自分の世界で悩む留美那を前に、 「……俺、なんでここにいるんだろ……」 「お金持ちって変な子多いんやなあ」 「……帰ったら駄目なのかな……」 静真たちは呆れるしかなかった。 「また来てくださいね」 「ええ、気が向いたらお邪魔させてもらうわ」 笑顔で送り出す留美那に、笑顔で答えるベル。 その後ろで静真は「二度とこねー」とか言っているがその意見はおそらくは確実に黙殺されるだろう。 「桐沢静真さん」 「あ?」 留美那が真っ直ぐに静真を見据える。 「……私が彼女を見つけたと言うことは、いずれは他の誰かも彼女に辿り着くことでしょう。あなたの言うとおり に、彼女に特別な力がないとしても……それでも、マニアはその希少性に目をつけ、彼女を求めるはずです。 今のまま、ランク外の無名のままでは……」 「裏バトルで手を出しやすい、ってか? だから公式リーグで力をつけて名を上げろ、か。あんたもうちのクソ兄 貴と同じ事言うんだな」 「ええ。ベルちゃんの華麗な戦いをもっと見たいと言う個人的欲望が大半ですが」 「……大半つーか全部だろ。ま、考えとくよ。だけどな、俺はあんたらの都合よく動いてやる気はねぇからな」 「都合よく動けるだけの能がない、のまちがいでしょう」 「黙れ」 「仲がよろしいんですね」 「「何処が!」」 見事なパーフェクトハーモニーであった。 「ふふ。それではまたいずれ。今度は公式の場で」 「気が向けばな」 言い捨てて静真は香織たちの所へと歩く。その姿が消えるまで、留美那は笑顔で見送った。 「――よかったのですか、姫」 静真たちの姿が見えなくなった後、肩に乗っていた黒い騎士型MMS、「エクエス」が問う。 「何がですか?」 「戦えば、勝てました」 「でしょうね。ですが、貴女が戦いを挑んだ場合、あの女の子の神姫も戦いに入ったでしょう。二対一では……」 「勝てぬ、とおっしゃりますか」 「いえ、美しくありません」 エクエスの言葉に、留美那は笑顔で返す。 「狩りはエレガントに行うものでしょう? 表舞台であれ裏舞台であれ、相応に華やかに」 「御意にございます」 エクエスは頭をたれる。 「表舞台に立たぬなら、立たせるまでです。その経過で倒れるなら、それもまたよし。いずれにせよ、最高の舞台 を用意しましょう、彼女と、貴女のために」 「は。お心遣い感謝いたします。このエクエス、一命をとして姫の願いを叶えてご覧にいれましょう」 「期待しています、エクエス」 留美那は踵を返し、屋敷へと戻る。エクエスもまたそれに続く。 「――ジ・オリジン。いずれ必ず私のものにしてみせます。 この私、篠房留美那――――いえ」 振り返る。 その彼女の頭には、猫耳が装着されていた。 「世界征服を企む悪の秘密結社、ねこねこ団が」 続く
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2306.html
キズナのキセキ ACT1ー5「北斗七星」 □ ホームに電車がゆっくりと滑り込んでくる。 最寄りのT駅が始発の、折り返し電車である。 平日の朝は、人であふれかえる時間帯だが、今朝は日曜日のためか、電車から降りる人も、これから乗り込む人影もそう多くはない。 のんびりとした雰囲気がホームに漂っている。 朝七時。 冬の朝は空気がピンと張りつめていて、眠たい頭に心地よい。 俺は昨晩のことを思い出しながら、開いた扉をくぐり、列車に乗り込む。 長い一夜は、眠りに落ちたところで終わりではなかった。 夜中に叫び声を聞いて、飛び起きた。 ティアの叫び声に、深く眠っていても反応してしまうのは、我ながら過剰反応なのではないか、と思う。 電気をつけて、ティアの様子を見ると、やはり泣いていた。 ティアにはひどく辛い過去があり、ときどきそれを夢で見るという。 今回もそれかと思っていたのだが、しかしティアは涙を拭うと、決然とした表情で言った。 「マスター、お話しなくてはならないことがあります」 ティアの真剣な眼差しに、寝ぼけ眼の俺は気圧された。 そして、彼女の話を聞くにつれ、眠気は飛んでいった。 ネット上で、先代のミスティに会った、というのはかなり突飛な話だった。 だが、ミスティのコアは先代のものを使っていると聞いた。戦闘データとプログラムも引き継いでいるという。 だからこそ、今のミスティは、先代と同様に、ストラーフに近い戦闘スタイルなのだ。 クレイドル上でティアとミスティのデータが混線し、そのネットワーク上で……つまり、俺のPCとクレイドルの間で、二人のAIが覚醒したのだとすれば。 仮説に過ぎないが、あり得ない話ではないと思う。 それに、他でもないティアがそう言うのだから、俺は信じるしかない。 ティアがもたらしてくれた情報は、非常に重要なものだった。 桐島あおい、マグダレーナ、狂乱の聖女、すべてを回避する戦闘スタイル、そして、マグダラ・システム……。 断片的な情報に過ぎないが、ようやく具体的な手がかりが現れた。 ティアの話が終わってもまだ日は昇っていなかった。 そのまま眠る気にもなれず、それらの単語についてネットで調べてみた。 結果は空振りだった。 それらしき神姫の存在は匂うものの、はっきりとした情報となると皆無だった。 裏バトルで活躍する神姫とはいえ、こうもネット上に情報がないものだろうか? ただ、マグダラ、聖女、といった単語は、聖書に関連するのではないかと考えられる。 聖書、キリスト教、教会、信者、修道女……そういえば、シスターをモチーフにした神姫も発売されていたな。 俺の貧困な想像力では、せいぜいその程度の連想が限界だった。 まだ情報が足りない。 どちらにしても、今朝一番に赴くところは、そうした調べものを依頼するのにうってつけだと思った。 行き先はホビーショップ・エルゴである。 □ ホビーショップ・エルゴは、個人経営の神姫専門ショップである。 見た目は普通の、町のホビーショップ。店舗規模は秋葉原などの大型ホビー専門店や、各地の神姫センターとは比べるべくもない。 だが、店内に一歩踏み込めば、神姫の魅力が凝縮された空間に圧倒され、そして夢中になることは間違いない。 いや、大げさではなく。 二階にある対戦フロアは連日賑わっている。 名のある強者も多く集まり、毎日のように豪勢な草バトルが繰り広げられている。 ホビーショップ・エルゴには、ティアとの一件以来、何度か足を運んでいた。 頻繁に行くことができないことが本当に悔しくてならない。 だから、近所のホビーショップでは事足りないときには、片道二時間近くかかっても、電車賃がかかっても、エルゴまで行くのだった。 もちろん、今日の用件は、そんな自己満足の為ではない。 エルゴの店長・日暮夏彦氏は、神姫の修理やカスタムの腕に定評のある人物だ。 大破してしまったミスティであるが、主要部分が無事な今の状態であれば、なんとか修理してもらえると思う。 また、彼は神姫専門の探偵業のようなことを副業にしているようだ。 「正義の味方」などとうそぶいていたが、彼なりの照れ隠しなのだろう、と解釈している。 ともかく、俺よりもはるかに広くて深い情報網を持っていることは間違いないから、『狂乱の聖女』について調査を依頼するつもりだった。 □ 朝九時ちょっと過ぎに店の前に到着した。 いつみても、ごく普通のホビーショップの店構えだ。 開店直後だというのに、店の前にはいくつも自転車が停まり、今もお客が扉の奥へと吸い込まれていく。 俺はゆっくりと店内に入った。 目当ての人物は、カウンターの中に立っていた。 彼は、いらっしゃい、と言った後、俺に向かって相好を崩した。 「おお、遠野くんじゃないか」 「おはようございます、店長」 「こんなに朝早くから、どうしたんだい?」 「神姫の修理をお願いしようと思いまして」 「修理って……ティアちゃんに何かあったのか?」 本気で心配そうな表情。 神姫に対して親身になれる日暮店長を、俺は好ましく思っている。 「いえ、ティアは無事です。この神姫の修理をお願いしたいんです」 俺はハンカチにくるんだ、その神姫を差し出した。 かすかな既視感がある。以前もこれに似た状況があったからか。 日暮店長は、俺に一度目配せすると、そっとハンカチを開いた。指先が慎重なのは、きっと彼も既視感を感じているからに違いない。 「っ……イーダ型か……これはひどいな……」 さすがの店長も眉をしかめている。 四肢がなく、包帯代わりのマスキングテープをぐるぐる巻きにされた神姫を見れば、誰だっていい気分はしないだろう。 そして、俺はとっておきの一言を放つ。 「久住菜々子さんのミスティです」 「な……!?」 その時の日暮店長の表情は見物だった。 少ししかめていた顔が、一瞬で驚愕に変わっていた。 おそらく、日暮店長はミスティの戦いぶりを知っているだろう。だからこそ、ここまで大破したミスティに驚くのだ。 この人も、俺が知らない菜々子さんの過去を知っている。 店長は真顔になり、ちょっと声を細めて、言った。 「……何があった?」 「……それを話すと長くなりますが」 うーむ、店長はと考え込んでしまう。 そして俺の方を上目遣いで見た。 俺は店長の逃げを許さない気持ちで、じっと彼の顔を見つめる。 すると、店長はがっくりと肩を落とした。 「しまったなぁ……今忙しいんだが」 そう言いながら、もう一人の女性店員さんに店を任せる旨を伝えると、俺を手招きした。 この女性の店員さんは神姫で、胸像の姿をしている。聞けば、店長がなぜかボディを与えないという、かわいそうな話だった。 俺は日暮店長に続いて、店内の奥に入った。 店奥にある事務スペースに入ったのは何ヶ月ぶりだろう。 あのときも、ハンカチにくるまれた神姫のボディを挟んで、日暮店長と話し込んだものだ。 日暮店長は、どっかりとPCの前のイスに座ると、小さなテーブルの前のパイプイスをすすめた。 遠慮なく座る。 「で、俺に何をさせたいんだ?」 単刀直入な問い。 俺は店長を見据えつつ、口を開く。 「まずは、ミスティの修理を。できれば早急に」 「それはまあ、引き受けよう。重要パーツに問題がなければ、直るはずだ」 「そこはチェック済みです」 「……こっちも商売なんで、修理代がかかるが?」 「大丈夫、今回はスポンサーがいるので」 店長は少し笑って頷いていた。 「それから、調べてもらいたいことがあります」 「調べもの?」 「はい」 俺はバッグからメモ帳を取り出すと、いくつかの単語を書き込んでいく。 桐島あおい、マグダレーナ、狂乱の聖女、マグダラ・システム……。 日暮店長はこの単語の羅列に首を傾げる。 「これは?」 「菜々子さんと対戦し、ミスティを破った相手を示す言葉です。おそらくは、彼女が放浪し、戦い続ける理由です」 「ネットで調べたか?」 「調べました。ですが、芳しい成果はなかった。だから、ここに来たんです」 日暮店長は、深いため息を一つつく。 「こういうのは依頼料がかかるんだが……」 「菜々子さんを助けてやってくれ、と言ったのはあなたのはずですが」 彼は再び、がっくりと肩を落とす。 どうやら覚えていたようだ。 俺と店長は、以前、約束をした。 いつか、菜々子さんが戦い続ける理由を知り、手助けをする、と。 「今がその時だと思います。彼女を助けるために、少し手伝ってくれてもいいと思うんですが」 「まいったなぁ……。今、ちょっと仕事が立て込んでてな」 「……探偵の、ですか?」 「うん、まあ……ちょっとやっかいな神姫が動き出していてね……ああ、君らには関係ないことだよ、うん」 「俺も店長に無理なお願いをしようってわけじゃありません。店長が調べられる範囲で、これらの言葉について調べてもらえれば」 店長は、うーむ、と唸ったが、結局は首を縦に振ってくれた。 「それから……」 「おい!? まだあるのかよ!」 「ええ……まあこれは店長がご存じのことなので」 「……何だ?」 「店長が知る、以前の菜々子さんについて、教えてください」 日暮氏は、ちょっと驚いたようだった。 すると今度は腕を組み、なにやら少し考えている。 やがて、俺の方に視線を向けた。 「話してもいいが……君は菜々子ちゃんがどうしてストラーフからイーダに神姫を変えたのか知っているかい?」 「……いいえ?」 一体なんの話だろうか。 店長は大きく一つ頷いた。 「そこらへんの事情は俺も知らないんだ。俺が菜々子ちゃんと初めて会ったときは、もうイーダ型のミスティちゃんを連れていたからな」 「それでは、桐島あおいを追いかけていることについても?」 「そう言う名前の神姫マスターを彼女が追っているらしい、ってことくらいかな。詳しくは知らないんだ。本当だぜ?」 「そこを疑ってはいませんが……」 つまり、日暮店長は、菜々子さんと桐島あおいの決別や、ストラーフ型のミスティの敗北については知らないわけだ。 その点を知ってからでないと、日暮店長から話を聞いても、わけが分からないかも知れない。 「それでは、菜々子さんが神姫を乗り換えたことについて知っている人物に心当たりは?」 「うーん……エルゴに菜々子ちゃんを連れて来た神姫マスターなら、知っているんじゃないかな」 「誰です?」 「花村耕太郎くん。『薔薇の刺』ローズマリーのマスターだよ」 □ 店の二階にある武装神姫コーナーは今日も賑わっていた。 ここにも何度も足を運んだから、勝手は知っている。 常連さんたちが溜まっているあたりに足を向けると、目当ての人物が俺に気付いて手を挙げてくれた。 「珍しいね、一人で『ポーラスター』に来るなんて」 「お久しぶりです、花村さん」 花村耕太郎はふくよかな顔に、人の良さそうな笑顔を浮かべている。 彼とは顔見知りだ。 ティアの新型レッグパーツの習熟の時に、菜々子さんから紹介された。 花村さんは、ゲームセンター『ポーラスター』の常連さんの中でも古参の神姫マスターで、『七星』の一人だ。 『七星』とは、『ポーラスター』に通う神姫マスターの実力上位七人に与えられる、名誉称号のようなものである。 彼らは上級者として『ポーラスター』に集う神姫マスターたちを引っ張っていく存在だ。 ただ、『七星』は名誉称号に過ぎないから、何らかの権限があるわけでもないし、定員も七人と決まっているわけではない。 現在、『七星』は五人。 菜々子さんも『七星』に入るよう声をかけられているが、辞退していると聞いている。 花村さんの名前が出たので、エルゴからの帰り道、『ポーラスター』に寄ることにした。 確かに、ポーラスターの長老、などと呼ばれる花村さんなら、過去の菜々子さんや桐島あおいのことをよく知っているだろう。 彼は毎日のように『ポーラスター』に顔を出しているので、おそらく会えると思っていたが、予想通り会うことができた。 「今日は、エトランゼと一緒じゃないのかい?」 「……ええ。今日は訳あって、別行動です」 もちろん、菜々子さんはとても外出できる状態ではないわけだが、嘘は言っていない。 花村さんは人の良さそうな笑みを崩さない。 「へえ。それじゃ、今日はどうしたの?」 「花村さんに話があってきました」 「俺に?」 「はい」 俺は神妙に頷くと、直球勝負で切り出した。 「久住菜々子さんと桐島あおい。二人の過去について教えてください」 俺がそう言った瞬間、あたりの空気が劇的に変化した。 ゲームセンター内の独特の喧噪は背後に聞こえているのに、俺の周りだけ音声が沈殿してしまったかのようだ。 その場にいた常連さんたちは、誰もが息を飲み、その後困惑したような、後ろめたいような表情で沈黙している。 花村さんも、どこか懐かしむような、悲しいような、困惑しているような複雑な顔をしていた。 そして、深いため息を一つつくと、 「遠野くん、ちょっと来てくれ」 そう言って、俺をゲーセン内にある自販機のコーナーへと誘った。 ジュースの自販機で適当な飲み物を二つ買う。 一方を俺に渡し、花村さんはプルタブを開けた。 都合良く、そのコーナーには俺と花村さんの二人だけだった。 ゲーセンの喧噪は時に、会話をする者にとっての仕切板にもなる。 花村さんは手にした炭酸飲料を一口飲むと、また一つため息をついて、言った。 「……君がいつか、その話にたどり着くかも知れない、とは思っていたよ」 「え?」 「『エトランゼ』……久住ちゃんは、随分君に気を許していたみたいだったからね……」 花村さんは正面を見つめ、微笑していた。 遠い目で見る視線の先は、過去を見ているのだろうか。 そして、その微笑みは、苦笑……いや、自嘲のようにも見える。 「懐かしいね、マリー」 「ええ……ルミナスにミスティ……神姫たちも」 花村さんの胸ポケットから応える者がいた。 金髪の神姫。朱とピンクにリペイントされたジルダリア型は、花村さんの神姫・ローズマリーである。 ローズマリーは、花村さんが所有するただ一人の神姫だ。 彼女もまた、ここ『ポーラスター』では最古参なので、事情には詳しいはずだ。 「教えてもらえますか、久住さんと桐島あおいのことを」 「……二人に何かあったのかい?」 「直接見たわけではないですが……二人は対決したようです。そして、久住さんが負けた」 そう言うと、花村さんは今まで見たこともないような、痛ましい顔を見せた。 「……そうか……結局、俺たちも、彼女に何もしてやれないままだったんだな……」 「……?」 「遠野くん……久住ちゃんを助けてあげられるとしたら……その可能性があるのは、もう君しかいないのかも知れない」 「それは……」 「……いや……君に責任を押しつけるとか、そういうのではないんだ。 ただ、君には知っておいてもらいたいし、知る権利がある。 『エトランゼ』に近しい神姫マスターとして……俺たちの仲間として」 随分大仰な物言いだな、と思ったが、こちらを向いた花村さんの目は真剣だった。 「では、話してください、二人のことを」 花村さんは俺の言葉に頷いた。 「今からもう三年近く前の話か……。 桐島ちゃん……桐島あおいという神姫マスターは、『七星』の一人だった。 久住ちゃんは桐島ちゃんの背中を追いかけて、ひたすら腕を磨いてた。 やがて、彼女は腕を上げ、『アイスドール』という二つ名で呼ばれるようになったんだ……」 ◆ 某日、某所。 「……もはや猶予はない」 「でも、わたしたちだけでは手が足りないわ」 「だが、どうする。協力者なぞ望むべくもない」 「……一人心当たりがあるわ」 「……あの娘か?」 「そうよ」 「わからぬ。なぜあんな取るに足らぬ娘に執着する?」 「わたしにとっては……特別なのよ」 「……まあいい。おぬしがいいというならば、反対する理由もない」 「それはよかった」 「引き込む算段はあるのだろうな?」 「それはもちろん。……あなたにも少し手伝ってもらわなくてはならないけど」 「……仕方があるまい。『あの方』がもうすぐいらっしゃるのだ。そのためならば、骨も折ろう」 「それじゃあ、まずは……」 「……」 二人の声は、闇の中に霞んで消える。 次へ> Topに戻る>
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/176.html
そのきゅう「たまには勝敗の無いゲームを」 「ティキ、大丈夫かな?」 「心配性だね。大丈夫だよ。オレ達の神姫だっているんだからね」 「お前は初めてかもしれないけど、俺たちは何回かやってるから、安心しろよ」 「しっ。待って、うちの子が何かを見つけたみたい」 その言葉に反応し、僕らはモニターに釘付けになる。 そこにはティキと、他三体の神姫たちの姿があった。 その日僕は、弓道部の仲間で、武装神姫のオーナー仲間でもある式部敦詞に誘われ、チョット大き目のセンターに遊びに来ていた。 式部が言うには、 『武装神姫の、バトル以外の楽しみ方を教えてやるよ』 との事。 一体何の事かまったく理解せず、僕はティキと一緒に半ば強引に式部について行った。 まずそこで僕は二人の男女を紹介される事になる。 チョット背の高い優しそうな顔立ちのお兄さんと、アーンヴァルの素体にストーラーフのコアをつけた神姫。そして眼鏡のクールな女の子とチョット珍しいフブキの神姫。 「はじめまして。オレは司馬仙太郎。君よりはチョット年上の大学生だよ。で、コッチがオレの相棒、ナイア。よろしくね」 「私は結城セツナ。高校二年生。こちらが私の海神(わだつみ)。よろしく」 で、僕はその女の子――お姉さんの名前を聞いて驚くわけだ。チロッと式部の方を見ると、ヤツはニヤニヤと笑っている。 コンチクショウ! わざとだな! 僕は腹をくくって自己紹介をする。 結城さんが僕の名前を聞いて、驚いてから、やわらかく笑った。 『カードキーの様であります』 海神がそのカードを拾いながら言っている。基本装備をほとんど持たない忍者型の海神は、忍者刀・風花に大手裏剣・白詰草、黒き翼プラス一部ヴァッフェバニーの装備で武装している。 『なるほど。それでさっきの扉を開けろというワケね』 そう言ったのは式部の神姫、ツガルのきらり。こいつは先行特別販売でGETしたツガルを事あるごとに自慢していた。きらりは基本的なツガルの武装。 『パターンだネ。もう少し凝ってくれてもイイのにネ』 ナイアはそういうとやれやれとでも言いた気にため息を吐く仕草をしている。ナイアは悪魔型フル装備に天使型のウイングユニットを無理やりつけたような、一際巨大なシルエットをしていた。 『あのあの、そういうものなのですかぁ?』 この中でティキだけがオドオドしているのがなんだか情けない。ちなみにティキはバトル用の武装。だって何やるか聞いてなかったんだから仕方ない。 『そ。こういう探索ものではありきたりの、要するにスペースを無駄にしないためだけの処置ね』 ティキとはすでに見知った仲の、きらりが答える。 『それじゃ扉まで戻る前に、一応奥まで行ってみよっか? 何も無いとは思うけど、初参加がいるからその方がいいでショ?』 その言葉にティキ以外の二体が頷いた。 今ティキ達がいるのはPC上に再現された機械遺跡。ジオラマ作成ツールを利用して作られたモジュールの一つ。そのジオラマに設定されたイベントをこなしてクリアを目指す。 本来はネットを介してやるらしいんだけど、こんな風にオーナー同士集まってやるのもまた一般的。 実際ならそれぞれのユーザーが自作するものらしいんだけど、今回使用しているのはオフィシャルなもの。それでも元は一ユーザーが作ったもので、それを調整したものらしい。 ……ジイ様に聞いたTRPGとか、母さんに聞いたMMOとか、そんなのを彷彿させる。 で、僕達オーナーはなにをするのかと言えば、神姫たちに時限式で送られる後情報を基にした指示を与えたり、一緒になって謎解きなどする事などなど。ま、中にはオーナーが一切何も出来ずに、ただ見守るだけのモジュールもあるみたいだけど。 艱難辛苦を乗り越え、ようやく最深部への扉の前に到着。 そしてここにきてオーナーに向けたテキストが現れた。 『この扉より先、オーナーの指示は神姫に届きません』 なんだよ。最後の最後で観戦モードか。 当然僕らはそれを神姫たちに伝えた。 『ふええぇぇぇぇ? 心細いのですよぉ~』 さすがにティキは不安を隠せないでいる。 しかし他の三体は慣れたもの。動じることなく扉を開ける意思を示す。 そうなるとティキにも僕にも拒否権なんてあるわけもなく、しぶしぶと同意する。 躊躇無く扉を開けるナイア。 広い空間。その空間で複数の神姫が一点を目標に攻撃してる。 『あなたたち、ここは危険よ! すぐに退避しなさい』 目標に向かってマシンガンを打ちながら、こちらを振り返る事無くそのアーンヴァルは言う。 『えっと、そう言われても……困るのですよぉ~』 『ティキちゃん、自動起動するイベントだから。なーに言っても無駄だから。ネ?』 困惑するティキに、ナイアはにこやかに答える。答えながら、臨戦態勢を整えた。 『ふぇ? え?』 何をして良いのか見当もついていないティキ。その脇では海神ときらりも攻撃の態勢を取っていた。 それに習い、ティキもレーザーライフルを構える。 四体が準備をするしないに関わらず、多くのNPC神姫がほぼ同じポイントに攻撃を続ける。 『いける?』 NPCの一体がそうつぶやいた時だった。 しゅるるるるるる あからさまな音を立てながら無数のコードが大勢いるNPC神姫たちに襲い掛かる。 『きゃああぁぁぁぁぁぁぁ!!』 そのコードはまるで自我を持つかのように自在に動き、多数の神姫を一人残らず絡め取る。滑る様に神姫の肌を蹂躙し、手足の自由を奪う。 そして動けない神姫を侵す様にソケットの穴や口に侵入した。……それ以外のところにも。 『いやぁぁぁぁぁぁーーーーー!!』 『あああぁぁぁぁぁぁ!!』 コードに犯された神姫たちが悲鳴を上げた。 それをモニター上で見ていた僕は赤面した。 「……なんかこれってエッチくない?」 小声で隣に座っている式部に話す。 「同感。……女のクセになんで結城はこんなの選んだんだ」 僕と同じく小声で言った式部の言葉を受け、僕はチラリと結城さんを見る。 だが僕には眼鏡をかけたそのお姉さんの表情を図る事が出来ない。 『~~~~~~~!!!』 ティキが真っ赤に顔を染めながら左手のハンドガンで射撃を開始する。狙いはコードの一本一本。 「弾が六発しかないリボルバーで何やってんだよ~」 僕の声がティキに届かない事は自覚していたが、それでも言ってしまった。 『まだターゲットそのものが現れていません。無駄弾を消費するのは賢明では無いと忠告します』 海神が僕の代わりにティキに注意してくれた。 『どうやら大ボスのお出ましのようよ。ティキちゃん』 きらりが両腕のライフルを構える。 そこに現れたのは現行通常販売している神姫五種の首を持つ鋼鉄の大蛇。尻尾の変わりに無数のコードが生えている。その尻尾コードが、他の神姫たちを犯していた。 『……悪趣味~』 ナイアは心底嫌そうな表情で、吐き捨てるようにそう言うと、レ-ザーライフルを発射させる。 それを神姫が繋がれたままのコードで大蛇は防御。その結果、レーザーはNPC神姫を焼き、溶かす。 『ますます持って悪趣味!!』 きらりはそう言うなり、狂った様に二つのライフルを乱射させる。 だが大蛇も防戦ばかりではない。大蛇のコードがきらりの足に巻きつく。 『ひぃっ!』 巻きついたコードに嫌悪感を顕にする。 きらりに向かって更にコードが迫る。 『いやっ!!』 きらりは目を閉じた。 が、いつまでたってもきらりにコードが巻きついては来ない。 恐る恐る目を開けるきらり。そこには海神が立っていた。海神の刀が、きらりに向かってきたコードを断ち切っていた。 「なるほど。神姫の怒りと恐怖をあおる為の演出なんだ」 モニターを注視していた司馬さんが感心した様に呟く。 「いや、だとしても悪趣味なのは変わらないと思うんですが……」 「そうね。でも計算されているわ。オーナーとの連絡は届かず、敵は悪趣味。あの子達、冷静に判断できているかしら?」 僕の言葉に対し、結城さんは冷静に答える。心配じゃないのかな? と思わずにいられないくらいに、冷静。 そういう意味じゃ、とても普段の態度からは想像も出来ないくらいに我を失っている男が隣にいる。 「きらり! きらり!! 大丈夫かーーーーっ!!」 ……お前、最初に僕になんて言ったよ。 そんな間にも状況は変化しているようだ。 大蛇に犯されていた神姫たちが、攻撃に参加し始めた。 もちろん、エネミーとして。 『このままじゃ手詰まりだヨッ! 海神ちゃん、ティキちゃん。私たち援護するから、二人でアイツに接敵して!』 『任務、了解』 『ハイですぅ! レーザーライフル置いて行くですので、使って欲しいのですよぉ♪』 『ありがと。きらりちゃん、行くヨ!』 『あんな目に遭って、更にあんなのに利用されたくないもの。全力で行くわ!』 どうやら作戦が決まったらしい。それぞれ武器を改めて構える。 ティキも西洋剣をスラリと抜いた。 何の合図も無く、四体は同じタイミングで動き出す。 二本の巨大な銃口から光の筋を打ち出すナイア。 そのフォローをするように、ナイアの撃ち洩らしはきらりが両の手のライフルで粉砕させる。 縦横無尽に宙を飛び、地を駆け、時には障害になる敵を刀や大手裏剣でなぎ払い、海神は大蛇へと近づく。 ティキは、味方の援護、敵の銃弾、大蛇の尻尾のその事ごとくを超反応で避け、一足飛びで大蛇に接した。 『一つっ……ですぅ☆』 ティキは大蛇の傍らに到着するなりそう言った。そう言った後、大蛇の首の一つ、マオチャオの首が爆散する。 『ティキとおんなじ顔を、つけてて欲しくないですよぉ♪』 そう言うなりすぐにその場から移動。一拍遅れてその場にコードが叩き付けられる。 『……………………』 何も言わず、海神が大手裏剣を投げる。それはそのまま吸い込まれるようにアーンヴァルの顔がついた大蛇の首を断つと、そのまま勢いを保ち、大蛇の背後の壁に突き刺さった。 ここにきてようやく大蛇に侵された神姫たちの攻撃がティキと海神に向けられる。しかしそれらの攻撃が開始される前に、ナイアときらりが大蛇の手足となった神姫を破壊する。 すでに勝敗は決していた。 「マスタ、恐かったですよぉ~」 現実の体に意識が戻るなり、ティキは僕の頭に飛びついてきた。正確に言えば顔に向かってきたティキを心持避けたら、頭に飛び込んで来たんだけど。 僕は頭の上でじたばたしているティキに意識を向けながら、それでも三人に目を向けずにはいられなかった。僕は、自分以外の神姫オーナーを知らなすぎる。 司馬さんはナイアを肩の上に乗っけて、ナイアの健闘を称えていた。ナイアはそれに胸を張って答える。 式部は…… あー、なんて言うか、あの普段の態度は何処行ったんだか。頬ずりでもせんばかりにきらりを抱きしめて離さない。 ……正直、付き合い方を改めようかと、本気で思う。 で、結城さんは。 眼鏡の奥の瞳に優しげな光を湛え、そっと海神の頭をなでる。フブキは表情を豊かに表すことが出来ないらしいけど、海神のその顔はなんだかうれしそうで照れくさそうに見えた。 僕は頭の上でなおじたばたとしているティキを自分の掌に乗せて、 「お疲れ様」 と言う。 それにティキは満面の笑顔で答えてくれた。 終える / もどる / つづく!
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2729.html
キズナのキセキ ACT1-27「未知との対峙」 ◆ その夜のことを、桐島あおいは忘れたことがない。 裏バトルで敗北し、最愛の神姫を失い、絶望に打ちひしがれた、あの夜。 裏バトル会場の裏口を出た壁に身を寄せてうずくまり、身体を震わせていた。泣いていた。握りしめた手の中には、もはや動くことのないパートナーの残骸。 身動きもとれなかった。泣くことしかできなかった。今夜ここで、神姫マスターとしてのすべてを奪われた。夢や希望は言うに及ばず、プライドも闘志も、装備も神姫も、すべて。 何のために神姫バトルをやってきたのだろう。 その意志すらも、彼女は失いかけていた。 圧倒的な絶望の前に、過去など意味を持たない。輝いている思い出も、今は絶望の厚い雲に蓋をされて、あおいの心の底まで、その光が届くことはなかった。 声を押し殺していても、しゃくりあげる声が、真夜中の路地裏に響く。 それほどに孤独な静寂。 そこに。 「……力が欲しいか?」 しわがれた声がはっきりと聞こえた。 あおいは力なく顔を上げる。瞳からはいまだに涙の滴がこぼれていて、目の前の小さな影をはっきりとは判断できない。 ただ、闇から滲み出してきたようなその小さな姿は、神姫だと思った。 しわがれた声が落ち着いた口調で続ける。 「力が欲しくはないか? そなたの神姫の仇を取る力が」 「ちから……?」 「そうだ」 「……そんなこと……できるわけない……」 相手は金にものを言わせ、カスタムも改造も思うさま行った違法神姫だ。 目の前の神姫は明らかに素体のまま。あおいがまだ残している少々の武装で勝てる相手ではない。 だが、目の前の神姫は言い切った。 「できる。わたしならば、あの程度の神姫、雑魚に過ぎぬ」 「そんな……そんなこと……」 「力を望むなら、我が手を取れ、桐島あおい。我が力で、そなたの大切な神姫を奪った連中に復讐するがいい。わたしは絶対の勝利を約束しよう。そのかわり、そなたはわたしの復讐に手を貸すのだ」 「ふくしゅう……?」 「そうだ、復讐だ。あのバトルで、そなたの神姫……ルミナスは破壊されるいわれなどなかった。あのような外道……神姫を破壊して悦に入っているような輩には、同じ地獄を味あわせてやればいい。あのバトルに歓喜していた連中も同様だ。そなたには復讐する権利がある」 復讐。 その言葉に、あおいの両の眼が開かれる。 そう、復讐だ。 ルミナスには、あの子には何の罪もない。愚かなわたしに命じられて、必死に戦っただけなのだ。 破壊される理由などありはしない。完膚なきまでに破壊し、殺す理由などありはしない。 自分の快楽のためだけに、優しい神姫を殺す……それは罪ではないのか。そんなことを平気でする連中が今日も高笑いしながらはびこっている。ルミナスのように破壊される神姫が、そしてわたしと同じように絶望に打ちひしがれるマスターが、これからも現れるかも知れない……いや、確実に現れる。 ならばどうする? ルミナスの無念を誰が晴らすのか。これから絶望に落ちるかも知れない神姫とマスターを誰が救うというのか。 あおいは目の前の神姫と視線を合わせた。 なんと昏い眼をした神姫だろう。 しかし、その昏い視線から、底知れぬものをあおいは感じ、身震いした。 「勝てるの、あなたなら?」 「言ったであろう。絶対の勝利を約束しよう。ただし、そなたの復讐の後は、わたしに力を貸せ」 「……わたしの復讐は、あいつを倒すだけじゃ終わらない。このエリアの不良マスターたちを根絶やしにする……それができる?」 「造作もない。思う存分やるがいい」 「……わかったわ」 あおいは一つ頷いた。 目の前の神姫は、変わらず昏い眼のまま、表情一つ変えず、生真面目な口調で言った。 「……契約成立だ。証にこれを」 黒い神姫が抱えていたのは、小さなワイヤレスヘッドセットだった。 あおいはもはや何の疑問も持たず、そのヘッドセットを受け取り、耳に付けた。 この日、桐島あおいとマグダレーナ、二人の復讐は始まったのだ。 ◆ 二人はお互いの得物をぶつけ合い、再び鍔迫り合いとなった。 ミスティは正面にある神姫の顔を見る。 マグダレーナの顔は、怒りと焦りに歪んでいる。 ミスティは今まで、裏バトル会場などで何度かマグダレーナの姿を見てきた。けれど、これほどに追いつめられた彼女を、ミスティは見たことがない。 そして、未だかつてないほどにマグダレーナを追いつめているのは、紛れもなく自分だった。 交差した剣と槍の向こう側から、マグダレーナがしわがれ声を発する。 「絆など……何の実体もないただの思い込み……そんなものに何の価値があるっ!」 「寂しい奴ね、あんたは」 ミスティはふっと優しく微笑みかけた。 「絆ってのはね、双方向なのよ」 ミスティは思い浮かべる。 自分と菜々子、自分とティア、自分と他の神姫マスターや神姫と繋がっていく絆。 それはまた、繋がった先の人や神姫からも伸びて、また繋がっていく。 広がっていく絆の軌跡は、まるでシナプスのように描き出される。 あるいは蜘蛛の巣のように。 ウェブ。 そう、それは…… 「絆ってのはね、ネットワークなのよ」 「ネットワーク……だと?」 「誰かと誰かが繋がって、またその先の人と繋がって、またさらに先の誰かと繋がって……どんどん広がっていく。しかも双方向。お互いがお互いのことを考える、助け合う。そしてみんなが幸せになれる。それが絆だわ」 「言っただろう……そんなもの……幻想に過ぎん!」 「幻想じゃないわ。その証拠に、みんなとわたしの絆が力になって、こうしてあんたを追い詰めてる」 「……思い上がるな!!」 マグダレーナは槍をはじき、間合いを取る。 ミスティは間髪入れずにダッシュする。 漆黒の修道女型は、間合いを保たん後退する。 「あんたは遅いのよ!」 叫びとともに、ミスティがダッシュ。両脚のホイールを回転させ、地面を滑りながら間合いを詰める。 「あんたの機動は、ティアにも、リンにも、シルヴィアにも及ばない!」 いとも簡単にミスティは間合いを潰して、斬りかかる。 マグダレーナはかわせず、エアロヴァジュラの一撃を捌く。続いて、ミスティの副腕による連撃。これも捌くが、ビームトライデントだけでは限界がある。腕やブルーラインの装甲が少しずつ削られる。 後退し続けてはジリ貧だ。マグダレーナは無理矢理踏み込んだ。 ミスティも踏み込んでくる。 力任せに得物をぶつけ合った。 また鍔迫り合いとなり、ミスティと視線が絡む。 「……弱い踏み込みね。ねここの突進に比べたら、蝿が止まったようなもんだわ」 嘲りの言葉に、マグダレーナは苛立つ。 力任せに押し返すと、今度は三つ叉槍を構え、連続突きを繰り出した。 速さは神速、狙いは正確。 あやまたず急所を貫くはずの槍はしかし、すべて刀と副腕によって捌ききられた。 「そんな連続技、フェフィーやランティスのコンボに比べたら、全然ぬるいわよ!」 マグダレーナは攻撃の手を止めない。 しかし、三つ叉槍一本の攻撃には限界があった。 ミスティはマグダレーナの連続攻撃を捌ききってなお、攻撃を当ててくる。 そう、攻撃が当たっているという事実が、マグダレーナに屈辱を与えていた。 亀丸重工の軍事研究所謹製のMMSボディは特殊な素材でできており、市販品の武装神姫の攻撃でダメージを受けることはない。あのファーストランカー『街頭覇王』の必殺技すら凌いでみせたのだ。 目の前の神姫からダメージなど喰らうはずがない。 はずだった。 「……なにぃっ……!?」 ミスティから繰り出される、すくい上げるような副腕の一撃を、からくもかわしたマグダレーナが声を上げた。 爪がかすめた腹部に、薄い裂傷ができていた。 気づけば、腕にも肩にも小さな傷ができている。 いずれも、ミスティの副腕の攻撃が当たったところだ。 ダメージ自体は微々たるものだが、自分を傷つけることが可能、という事実に、マグダレーナは驚き、そして……恐れを抱いた。 なぜだ、なぜ奴は私に傷を負わせることができる!? マグダレーナの問いは口に出す直前で消えた。 ミスティは誇るようにマグダレーナに告げる。 「あんたは弱い……マイティや雪華の方がよほど手強かったわ」 ミスティは今、実感している。あの特訓が……みんなとの絆がわたしを支えてくれている、と。 □ 「すげぇ……ミスティが押しまくってるぜ……!」 大城の感嘆に、俺は小さく頷いた。 今のマグダレーナは見るからに余裕がない。 彼女は下がらざるを得ない。なぜなら、ミスティの攻撃が当たれば、自らのボディが損傷する恐れがあるからだ。 『街頭覇王』三冬の必殺技の直撃を喰らってもボディは損傷しなかった。並外れたボディ強度も、彼女の余裕に繋がっていたはずだ。 だが、ミスティの副腕の爪は特別製だ。人工ダイヤモンドの欠片を研磨し、仕込んである。いくら丈夫な素体とはいえ、この世で最も硬い鉱物の爪で鋭く攻撃されれば、無事では済むまい。 それに、特別製のボディは丈夫だろうが、装備は違う。ボディよりも注意を払わなくてはならない。特にブルーラインはマグダレーナの機動を支えるものだ。破壊されれば、逃げようがなくなる。 マグダレーナにとっても、これほどに押し込まれて後退を強いられる戦いは初めての経験に違いない。 バトルの主導権はこちらが取った。あとはこのまま押し切って勝てればいいのだが。 ◆ ミスティの猛攻が続く。 滑るように前に出ながら、マグダレーナに対し、次々に攻撃を繰り出す。 マグダレーナは下がる。 「ブルーライン」の浮遊機能を最大限に利用しながら、ミスティの攻撃を捌き続ける。 マグダレーナは防戦一方だ。 表情は苦しく、いつもの余裕はまったく見られない。 マグダレーナは苦し紛れに、攻撃予測スキル「スターゲイザー」を起動する。この短いバトルの間に入手したミスティの戦闘データを元に、この先の攻撃を予測、視界にその軌跡を赤いラインで表示する。 瞬間、無数のラインが表示され、視界が赤く染まった。 攻撃が絞りきれない。 迫るミスティからは、あらゆる方向から攻撃が来る可能性がある。 どうすればいい。 スキルなしに、どうやって相手の攻撃を見切り、攻撃に転じればいい!? マグダレーナはその疑問に行き着き、そして愕然とする。 そう、彼女は今まで自分のスキルに頼りすぎていた。 だから、想定外の相手と戦うことはほぼなかった。未知の相手に対し、反撃の機会を掴むことさえ、マグダレーナはできない。 ならば、他の神姫はどうやって戦っているというのか。行動予測もなしに、どうやって未知の相手と対峙する? マグダレーナがそう考えた時、戦場に声が響いた。 「ミスティ、三連撃から連続突き! 下から上へ、攻め上がりなさい!」 声の主は、久住菜々子。 ミスティはマスターの指示を忠実に守りつつ攻めてくる。それはマグダレーナが分析したミスティの行動パターンを逸脱したものだ。 久住菜々子の指示は「女の勘」に頼ったものだと言う。その場の閃きや感覚による指示はパターン化できない。今までの戦闘データの蓄積があればともかく、データなしの今の状況では、法則を導くことはできない。 久住菜々子こそがミスティの戦闘行動に無限の可能性を与えているのだ。 それこそがミスティの強さの秘密なのか。 いや、違う。 マグダレーナは気付く。 普通の武装神姫ならば、当たり前の関係……神姫とマスター、二人でバトルに挑むということ。マスターは戦況を分析し、敵の動きを見ながら、作戦を立てて指示を出す。神姫はその指示の元に戦う。 マスターのバックアップがあるということは、なんと心強いことだろう。 それでは自分はどうだ。 人間を憎み、マスターは持たず、自分の力のみで戦ってきた。背後を守ってくれるマスターはいないし、必要性も感じていなかった。 だが、今や頼りにしてきたスキルは無効化され、実力をまったく発揮できない。 しかも、相手神姫の武装は未知、相手マスターはパターン化できない思考の持ち主。相性は最悪だ。 負けるのか。 このまま押し込まれ、目の前の神姫に倒されてしまうのか。 人間との絆を憎悪してきたわたしが、絆を肯定するこの神姫に敗れるというのか。 この不敗を誇るマグダレーナが。 「……くそっ」 吐き捨てた短い言葉は、マグダレーナが初めて発した弱音だった。 その時、 「マグダレーナ! 十二時方向にコーン発射、同時に四時方向に後退、距離二!」 聞き慣れた声で指示が飛んできた。 マグダレーナは反射的に、その指示を忠実に実行していた。 ◆ 「ミスティ、後退! 避けて!!」 菜々子の焦る声がミスティの耳に届く。 マグダレーナを追い詰めている最中だというのに何を言い出すのか、と思いもしたが、ミスティもまた反射的にその場を飛び離れる。 次の瞬間。 二人が攻防を繰り広げていた地点にミサイルが着弾、爆発した。 「な……」 轟音とともに広がる爆炎が、黒い神姫の姿を覆い隠す。 菜々子の指示を聞いていなければ、ミサイルはミスティに直撃していただろう。 そもそも、ミサイルはどこから飛んできたのか? ミスティが思考を巡らせていると、 「動きなさい、攻撃が来るわ!」 またしても菜々子の鋭い指示。 攻撃? 何の? ミスティの一瞬の逡巡。それが彼女の行動を遅らせた。 突如、爆炎を貫いて、銃弾が飛来した。 避ける間もなく、銃弾は背後のアサルトカービンの片方に直撃した。 「な、なに……!?」 ミスティは焦る。 マグダレーナが持っている武装は、ビームトライデントだけだったはずだ。なのになぜ、銃撃が来るのか。 爆炎が晴れていく。 機動を続けながら、ミスティは見た。 爆炎の向こう、相対するマグダレーナの手には、ハーモニーグレイス型のデフォルト装備「クロス・シンフォニー」が握られている。 それはマグダレーナのサポートメカに装備されていたものだ。 ミスティは理解する。 ミサイルもサポートメカに装備されていたものだ。独立して行動することはできなくなったが、マグダレーナが直接装備を使う機能は生きているのだろう。先ほども遠野にミサイルを撃っていた。 ミサイルは距離を取るための布石。 案の定、ミスティとマグダレーナは飛び離れた。爆炎で姿が見えない隙に、サポートメカの残骸に残された「クロス・シンフォニー」を拾い上げたのだ。 クロス・シンフォニーの銃口はミスティに向けられている。 マグダレーナの態度にも少し余裕が戻ったように見える。 何があったの? 自問自答する。 ミサイル攻撃の前、飛んできた声。指示があった。マグダレーナのマスターから。 つまり……桐島あおいから。 ◆ 久住菜々子は軽く突き飛ばされた。 たたらを踏んで、二三歩後ろに下がる。 「お、お姉さま……?」 突き飛ばした本人……桐島あおいは、頭を押さえながら、ふらふらと立ち上がる。 いまだ吐息は荒いまま。 しかし、戦場を見て、また菜々子を見つめる瞳は、はっきりとした意志が宿っていた。 「悪いわね、菜々子……絆よりも何よりも、強さを望んだのは……わたし。ルミナスの復讐のために、操られていると知りながら、それでもマグダレーナの無類の強さを望んだのは、わたし自身の意志なのよ!」 「そんな……」 「強くなければ、自分の意志も貫けない。それどころか、外道な連中にいいように弄ばれるだけ。 ……そう、弱さは罪。すべてを失い、絶望に落ち込み、たどり着いた……それがわたしの真理」 「……」 一瞬の沈黙。 あおいは脂汗を流しながらも、口元で微笑んだ。 「わたしとマグダレーナのコンビは不敗。……でも不思議ね。追い詰められている今この状況に、今までで一番ドキドキしてる」 「お姉さま……」 菜々子は確信する。あおいは強さの権化となり果てたわけではない。互いの死力を尽くすギリギリのバトル、その緊張感をも楽しむことこそ、菜々子が追い求めてきたバトルの形だ。 「そういう気持ちも尊いと教えてくれたのはお姉さまですよ?」 「そうだったかしら」 「そうですよ」 「だとしたら、この気持ちも否定しなくちゃならないけれど……少しもったいないわね」 「別に否定する必要なんてありません。その気持ちには価値があるんです。バトルの勝敗以上に」 「残念だけど認められないわ」 「認めさせてみせます……わたしたちが勝って」 「させないわ……行け、マグダレーナ!」 「走れ、ミスティ!」 二人のマスターから指示が飛ぶ。 ミスティとマグダレーナは同時に地を蹴った。 ◆ バトルは一進一退の攻防となった。 マグダレーナはミスティに比べて手数が少ない。しかし、火力に勝り、盾としても機能するクロス・シンフォニーを手にしたことが大きい。 銃撃で接近を図るミスティを牽制し、接近戦でもビームトライデントとクロス・シンフォニーを巧みに使って、ミスティの格闘攻撃を捌ききる。 逆にミスティは攻め手を欠いていた。 マグダレーナの銃撃は裏バトルでのリアルバトルを想定しているから、破壊力は段違いだ。迂闊に飛び込むことはできない。 それでもなんとか格闘戦に持ち込んでも、十字架状機関銃をシールドがわりにして、マグダレーナ本体に攻撃を当てさせない。 しかも、今まで後退一方だったマグダレーナが攻めに転じてきている。攻撃パターンの変化の理由は明らかだった。 桐島あおいの指示だ。 彼女の指示は的確で、神姫マスターとしての実力が伺える。その指示をマグダレーナは忠実に実行している。 マスターがいるといないとではこれほどに戦闘力が変わるものなのか。今更ながらに理解したその事実に、ミスティは戦慄した。 ◆ 決め手を欠いているのはマグダレーナも同じだった。 あおいの指示が来るようになって、互角の立ち回りができるようになったとはいえ、戦況はむしろ不利である。 ミスティのレベルアップは著しく、なおかつこちらの絶対有利なスキルは封じられたままだ。 装備の差も大きい。 ビームトライデントもクロス・シンフォニーも火力の面では申し分ないが、連続使用には心許ない。 クロス・シンフォニーは弾切れした一丁を捨て、残る一丁を拾って入れ替えている。 ビームトライデントの出力はもうすぐ限界だ。ビーム装備は電気をやたら食うのがネックである。 元々、マグダレーナは短期決戦が前提の装備だから、バトルが長引くほどに不利になるのは当然のことだった。もちろん、今まで残弾を気にするほどバトルを長引かせたことはなかったが。 「くそ……」 マグダレーナが短く吐き捨てる。戦況を好転させる手段がない。焦りばかりが募ってゆく。 その時だ。 「マグダレーナ、あれを使うわよ!」 あおいからの指示に、マグダレーナは目を見張る。 「あれをか!? こんな市販品ごときに……!」 「だけど、このままじゃ勝てないわ。わかるでしょう?」 あおいに言われるまでもない。このまま戦闘を続けてもジリ貧なのは、彼女が一番分かっていた。 「……仕方あるまい!」 マグダレーナがミスティの猛攻を避けながら後退する。 「させないわ!」 ミスティは追いすがる。 何が来るかはわからない。しかし、このバトルでこれ以上相手に有利な要素を与えるわけには行かなかった。 距離を詰めるミスティ。 そこに、 「コーン発射! 十二時方向!」 またしても桐島あおいの指示。先ほどと同じだ。四発目……最後のミサイルが来る。 「くっ……!」 そうと分かっていては、ミスティも方向転換せざるを得ない。 ミスティは進行方向を横にスライドし、マグダレーナから距離を取る。 果たして、ミサイルは来た。 マグダレーナの正面、追い続けていれば、ミスティがいたであろう地点に着弾、爆発する。 紅蓮の炎と漆黒の煙が、再びマグダレーナの姿を覆い隠した。 この煙幕の向こう、マグダレーナはいったい何をしようとしているのか? ◆ あおいはコートの内ポケットに右手を差し入れ、何かを取り出す。 そして、そのまま広場の中へ……戦場へと放り投げた。 菜々子は見ていた。それは剣だ。長い、神姫の身長ほどもある長大な剣。 このバトルで装備の追加はルール違反ではない。元より、そんな規定はリアルバトルにはない。 その長剣は、マグダレーナのすぐそばに落ち、地面に突き立つ。 マグダレーナは手にした三つ叉槍と十字架銃を捨てた。 間髪入れずに長剣の柄を握り、地面から引き抜きながら加速する。 突撃。 「ミスティ! 奴の武器は剣よ!」 菜々子の言葉より早く、マグダレーナは爆炎の中へ飛び込んだ。 ◆ 菜々子の言葉がミスティの耳に届くのと同時だった。 炎と煙が巻き、突如空気のトンネルが出現した。そう思う刹那、漆黒の神姫がその中を弾丸のように突き抜けてくる。 瞬足にして無音、フィールド発生を利用して炎の壁に穴を開け、低空を飛翔する……ブルーラインの真骨頂とも言える使用法だ。 ミスティは思わず足を引いた。黒い弾丸を回避しようと後退する。 マグダレーナは瞬く間にミスティの目前に着地、長剣を上段から振り下ろした。 ミスティは上半身を下げ、回避の姿勢。 早めの回避が功を奏した。長い剣ではあるが、その間合いは見切れた。鈍色に光る鋼の長剣の切っ先はミスティに触れることはなかった。 続けて、マグダレーナの切り返し。 ミスティがさらに間合いを取ろうとする。 その時。 「!?」 長剣が、うねり、伸びた。 ミスティが掴んだ間合い、タイミングを覆し、長剣の切っ先が上に伸びたところで横薙ぎに変化する。 精一杯にかわしたミスティの頭上を刃風が舞う。 いやな音と共に、背部にマウントされていたアサルトカービンが、接続部からごっそりと奪われた。 「な……なにあれ……」 銃器が破壊された以外のダメージはない。 しかし、その結果以上に、ミスティの意識を引き付けたのは、マグダレーナの鋼の長剣だった。 その姿は異形。 一本の鋼と思っていた刃はいくつもの節に分かれ、動力パイプによって一本につながれている。今はまるで鞭のようにしなり、地面に垂れていた。 まるで鋼でできた蛇だ。 ミスティは先ほどの攻撃を見誤った理由も理解した。 蛇腹になった分、剣の全長が伸び、ミスティの間合いを狂わせたのだ。そして、蛇腹の剣は鞭のように動き、縦から横へ自在の動きを見せて、ミスティの想像を超えた。 今、その鋼の蛇は、先端を持ち上げ、鎌首をもたげている。まるで、ミスティを威嚇するように。 しわがれた声がミスティの耳を叩く。 「断罪剣……ソリッドスネーク……これを使わせたのは、貴様が初めてだよ……もう、楽には殺さん……」 それは地の底から響く魔女の声のよう。 ミスティは戦慄しながらも、手にした刀を構え直した。 次へ> Topに戻る>